新生八八機動部隊1〜南シナ海の激闘 林譲治

 フィリピンに配置された戦艦コロラドに感情移入してしまっている。航空機輸送艦テンペストも名前がカッコいい。商船改造の員数外戦力にかき回させるのは作者の得意技だが、それをアメリカ側に用意した点でも珍しい作品だ。

 日本側の新機軸は戦艦扶桑が触雷したことで生まれた戦艦紀伊と尾張。そして装甲空母に変更された扶桑と山城である。そういえば紀伊と尾張をセットにしているなら、三番艦は御三家の水戸にするのが自然じゃないのかな?そういう架空戦記に記憶がないのは不思議だ。
 電探の存在に1巻の終わりまで完全には気づけていない点でも、本作はちょっと珍しい。フィリピンにいたアメリカ艦隊とイギリスのZ艦隊に日本艦隊が絡むことで、ややこしい事態が招かれている。

 紀伊と尾張の自慢の主砲が火を噴くことはあるのだろうか。日本の経済を動かした「大山理論」は現代的な問題提起でもある。現代は公共事業としての軍事は大っぴらにはやりにくいし、兵器の自給率も下がっているけれど。

林譲治作品感想記事一覧

新生八八機動部隊 南シナ海の激闘 (RYU NOVELS)
林 譲治
経済界 (2015-12-12)
売り上げランキング: 726,222
カテゴリ:架空戦記小説 | 21:47 | comments(0) | -

帝国海軍イージス戦隊1〜鉄壁の超速射砲、炸裂! 林譲治

 空母などに艦体の流用が可能な設計をされた軽巡洋艦阿賀野型。その構想から関わってきた森山少将が、阿賀野型4隻の戦隊をひきいて奮戦する。
 毎分20発の発射が可能な15センチ砲「超速射砲」の存在が恐ろしい。
 対空、対艦、対地、隙がないよね。だから米軍も負けまくっているよ。

 最後はサウスダコタ級戦艦(と空母3隻)が投入されてくるので、流石に滅多打ちとはいかないはずだが、プロローグで阿賀野型が全艦健在っぽいことから、林譲治式詐術で始末してしまう可能性が高い。横山信義の八八艦隊物語では最上型が戦艦に撃ち勝っていたなぁ。
 本作で高速戦艦を倒すのは、駆逐艦の雷撃か、航空攻撃か。
 搭載機数が限られるからと、阿賀野型ベース空母2隻に戦闘機だけを積んで防御に徹したら、逆に詰む状況だ。こうしてみると戦艦も有効なカードである。

 8500トンの阿賀野型の構想はアメリカ海軍のグリーブランド級軽巡洋艦とインディペンデンズ級軽空母が下敷きになっている?搭載機数36機から考えても、おおよそ近い感じである。
 電探と超速射砲の組み合わせによって、さらに恐ろしい存在と化しているが……TV信管まで繋げるのは無理そうだ。

林譲治作品感想記事一覧

カテゴリ:架空戦記小説 | 20:53 | comments(0) | -

第三次世界大戦1〜太平洋発火 大石英司

 脱税犯を追った中国の特殊部隊がアメリカで偶発的戦闘を行ったことを皮切りとして始まる第三次世界大戦のシミュレーション。
 エスカレートしていくアメリカと中国の制裁合戦に、近年おこなわれたアメリカとイランの角逐を思い出した。ただし、中国はイランよりも巨大で、それゆえに自分たちの価値観で物事を考え、アメリカの考えを推し量る能力に欠けていた。そして、アメリカはいつも通り。

 あまりにも不運な航空機事故も重なって、アメリカの前衛となった日本が空母をもって不幸にも中国と最初に干戈を交える展開になる。
 ヒラリー・クリントンをモデルにしているアメリカの大統領も狡猾かつ優柔不断で、太平洋諸国を巻き込んでくれる。

 望んで暴走している気配のあるフィリピンには困ったものだ。フィリピン大統領のモデルは、現在の大統領と同じなのかなぁ。
 常にちらつく核戦争の気配もあり、サウジアラビアにおける王家打倒の騒動もあり、戦火が世界中に燃え広がっていく焦げ臭さに満ちた1巻だった。

大石英司作品感想記事一覧

第三次世界大戦1 太平洋発火 (C★NOVELS)
大石英司
中央公論新社 (2016-03-28)
カテゴリ:架空戦記小説 | 17:57 | comments(0) | -

邪馬台国時代の東海の王〜東之宮古墳 赤塚次郎

 シリーズ「遺跡を学ぶ」130

 狗奴国時代の東海の王とタイトルにしてもらえないあたりに、狗奴国の知名度の限界をみてしまう。しかし、邪馬台国と張り合っていた狗奴国の実力はあなどりがたく、それは東之宮古墳の造られ方や副葬品にも表れているのだった。

 いったん山の頂上を削平してから、あらためて土を運び上げて前方後方墳をつくったとは驚きだ。古墳造営が効率からは程遠い宗教的な行為とはいえ、誰でもかけられる手間ではないだろう。結婚式をやたら豪華にとりおこなう尾張の風習に通じるものがあるのかもしれない。
 鏡に代表される「国産品」重視の姿勢も興味深い。邪馬台国より東にあったため、中国との距離感も異なっている?
 自分たちには独自にやっていける実力があるのだとの誇りが感じられる内容だった。

 巨大な木曽川扇状地がひとつの社会単位となっていたらしいことも興味深かった。1973年の発掘のきっかけとなった盗掘は、けっきょっく何も盗んでいかなかったのか?早めの発見が功をそうしたようだ。
 大学関係者が関わらない発掘であることが影を落としたと書かれていて調査に不備があったのかと気を揉んでいたら、単なるメンツの問題だったのはガックリきた。
 調査の内容は後で評価されていて安心した。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

邪馬台国時代の東海の王 東之宮古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」130)
邪馬台国時代の東海の王 東之宮古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」130)
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:24 | comments(0) | trackbacks(0)

リアルサイズ古生物図鑑〜古生代編 土屋健・群馬県立自然史博物館

 CGの力は偉大なり。
 見慣れた風景と古生物の再現CGを合成し、古生物のスケール感をわかりやすくした古生物図鑑。古生物単体や当時の風景ではわかりにくかった大きさをイメージしやすくなっている。
 中には調理された姿を晒している古生物もいて、ちょっと哀れ……味についての想像をさせてくれる点では有意義である。五感の中でも味覚で古生物を考えてみることは、あまりなかったな。

 各時代冒頭のページで、その時代の古生物の顔が一覧になっている演出も好きだった。
 なんとなく漂う群像劇感がたまらない。こっちはスケール無視で「顔」がクローズアップされているのだけど。

 古代の樹木を合成した都市の風景も興味深かった。イチョウの街路樹なんかは、CGをそのままやっているところがある?

古生物のサイズが実感できる!  リアルサイズ古生物図鑑 古生代編
古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編
カテゴリ:架空戦記小説 | 21:39 | comments(0) | trackbacks(0)

明智光秀 東美濃物語〜光秀45の謎〜 籠橋一貴

 明智光秀の出生について著者が追いかけた本。最後の根拠とした資料が周辺自治体の市史に収録された遠山氏の家系図であることは、どう考えたらいいのやら。
 徹底的な検証がされていると信頼するのも自然なことかな。

 明智光秀謀反の動機が、武田氏との戦いに関連して岩村遠山氏が滅ぼされたことにあると考えている点が興味深かった。四国問題よりも直接的に光秀の心理に影響を与えそうではある。

 各自治体提供の写真と、なぜかイタリアのイラストレーターが描いた挿し絵が本書を飾っていた。

関連書評
織田信長〜近代の胎動 藤田達生 日本史リブレット人045
カテゴリ:架空戦記小説 | 20:04 | comments(0) | trackbacks(0)

覇者の戦塵1945〜硫黄島航空戦線 谷甲州

 P-61ブラックウィドウ相手に初期型の零戦が活躍……ただし、電探と逆探と敵味方識別装置を装備した零戦である。
 レーダーの小型化技術が地味にすごい。機器が増えて機内のレイアウトはどんな感じになっているのか。長年の歴史改変の影響を感じる部分だが、アメリカ軍はほとんど史実のままでやってくれる。
 アメリカ海軍の夜戦部隊を倒したと思ったら、今度はアメリカ陸軍の夜戦部隊である。まぁ、両方倒した上で自然にマリアナ諸島を回復する展開にもっていくのかもしれない。
 つまり最後は夜戦頼みになってしまうのだとしたら、若干の虚しさもある。しかし、期間が残り3ヶ月に限られた状態で正面からの上陸作戦は難しかろう。
 海兵隊が大活躍することは間違いない。小早川中佐や陣内中佐が死なないといいが……あの大佐については心配していない。仮に死んでもひとつの世界における出来事にすぎない。

 蒋介石との政治交渉関連はあまり整理されていない情報の洪水が流し込まれた感じで、理解しにくかった。後から歴史の教科書に載ったら数行で整理されてしまう出来事。
 その渦中に立たされた「平凡な士官」の心理を描写した内容とは思う。

 秋津大佐は交渉のために満州から撤退するつもりみたい。この世界の満州には思い入れがあるので、ちょっと寂しい。だが、日本が破滅するよりは絶対によい。考えるほど結論は明らかになる。

 マリアナ諸島の飛行場をなんとかして本土爆撃を防ぐ作戦は、目標面で大陸打通作戦に似ている。第日本帝国の海軍と陸軍が協力しやすい舞台がしつらえられている。

谷甲州作品感想記事一覧

覇者の戦塵1945-硫黄島航空戦線 (C・NOVELS)
覇者の戦塵1945-硫黄島航空戦線 (C・NOVELS)
カテゴリ:架空戦記小説 | 21:15 | comments(0) | trackbacks(0)

帝国宇宙軍1―領宙侵犯― 佐藤大輔

 さらば佐藤大輔。もう続刊が出ないことに悩まされる日は来ない。3巻まで出す約束を解説者としたらしいが、本作は公認の未完に終わってしまった。
 編集者も深い感慨をもって(未完)の結びをつけたはず。

 架空戦記でならした著者が最後に原稿をおこしたのはスライドによって宇宙の孤児になった人々が生み出した歪んだ国家の数々が争うSFだった。
 楽観主義的な帝国はいいのだが、古代ギリシアに範をとったとする「ヘレネス」統一体が韓国のあからさまなパロディにすぎた。個人的には、なんとなく著者の余裕のなさを感じてしまった。著者が大好きな諧謔というには露悪的すぎたのではないか。
 ヘレネス統一体が韓国だとすれば、自由星系共和国は中華人民共和国に当てはまりそうだ(国力は帝国よりも小さそうだけど)。自由星系共和国の住民は生きている間に野放図に性転換をくりかえす性向をもっていて、なかなか強烈だった。
 フリーダム・スターズから独立した解放希求同盟は情報不足すぎて妄想が広がった。自由からの解放とは一体?

 主人公である天城真守大尉のキャラクターは「ライトな新城直衛」っぽくて好感が持てた。そうすると、敵方のアストレア・イズモは、ユーリア閣下に当たるのかな(ラブシーンも描かれているし)。皇国の守護者のセリフパロディとして読むこともできたかもしれない。
 実年齢で考えてはいけない世界観には作者の願望が入っていそう。いや、作者だけではなく、読者も高齢化してきたか。

佐藤大輔作品感想記事一覧

帝国宇宙軍1-領宙侵犯- (ハヤカワ文庫JA)
帝国宇宙軍1-領宙侵犯- (ハヤカワ文庫JA)
カテゴリ:架空戦記小説 | 22:21 | comments(0) | trackbacks(0)

ユーロファイター〜欧州を守る最新鋭機 驚異の製造現場

 ナショナルジオグラフィック

 ヨーロッパの四カ国が協力して製造しているユーロファイターの製造現場を紹介するドキュメンタリー。
 イギリス・ドイツ・イタリア・スペインとフランスを包囲するみたいな参加国である。スペインはちょっと意外な顔だ。さすがに出資比率は一番少ない。
 それぞれの担当部品や出資率も紹介されていて興味深い。エアバスに近いものを感じる。主力戦闘機をお互いの存在なしでは製造できなくすることも、安全保障の一部なのかもしれない。輸送路を寸断された場合は?

 主翼の中が燃料タンクになっていて、増槽を取り付ける必要がなく、その分だけ兵器を搭載できるコンセプトや機動性の高い部分は何かなつかしいものを思い出させた。
 低速での安定性が悪いところは違うけれども。

 テストパイロットがコクピットが快適なので空中給油で9時間飛び続けても疲れなかったと語っていて「それはお前が化け物なだけだろ」と突っ込んでしまった。
 まぁ、疲れにくいのは本当なんじゃないかな。
「空の王者」とのまとめには「F-22ラプター」が黙っていない気がした。褒め殺しか。

ナショナルジオグラフィックDVDレビュー記事一覧

ナショナル ジオグラフィック ユーロファイター 欧州を守る最新鋭機 驚異の製造現場 [DVD]
ナショナル ジオグラフィック ユーロファイター 欧州を守る最新鋭機 驚異の製造現場 [DVD]
カテゴリ:架空戦記小説 | 23:57 | comments(0) | trackbacks(0)

ときめく薔薇図鑑 元木はるみ・文 大作晃一・写真

 イギリスにデヴィット・オースチンという薔薇の名作出者がいるらしい。本書で紹介されている新しい薔薇のかなりが、デヴィット・オースチン作で、彼以外の作った英国の薔薇が出てくると驚いてしまうほどだった。
 日本人の作った薔薇もけっこう紹介されている。しかも、同じ年代でも複数の作出者がいることがわかる。河本純子氏が2008年に作った薄紫色のガブリエルがすばらしい。
 今後は欧米や日本以外からも新しい薔薇が出てくるかもしれない。
 イランあたりは地味にポテンシャルが高そうだ。

 薔薇を使った料理の紹介があって、きれいなだけに留まらず、なかなか美味しそうだった。そこまでに香りのよい薔薇の説明を受けていたおかげだろう。
 育て方の説明は著者の流儀にしたがって、自然と無農薬のものになっていた。秋の液肥も化学肥料でないなら、無農薬有機栽培かもしれない。
 どうみても手間が掛かるし、薔薇の世話で一年が回っている様子。大変そうだけど、うらやましくなった。

関連書評
ときめく鉱物図鑑 宮脇律郎 山と渓谷社
ときめく化石図鑑 土屋香・文 土屋健・監修
ときめく縄文図鑑 譽田亜紀子・新津健 山と渓谷社

ときめく薔薇図鑑 ときめく図鑑
ときめく薔薇図鑑 ときめく図鑑
カテゴリ:架空戦記小説 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0)
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