蛍の本 田中達也 日本写真企画

 ゲンジボタルニヘイケボタル、そしてヒメホタル。主に三種類のホタルを中心に、ホタルの生態と写真の撮影方法をおさえた本。
 一般の大人向け書籍が空きニッチであったらしく、学習に苦労した著者の思いが込められている。ホタル観察ではポイントとなる乱舞の時間帯や回数について、自らの経験にあわせた定説とは違う情報を影響してくれている。
 風の強い日や雨の日でも、飛ばないと思いこまずに観察に行けば発見があるかもしれないとのこと。他の撮影者や観察者がいない点ではチャンスにもなるはず。
 AFの赤い光でトラブルになるとか、撮影者同士の怖い逸話がちらっとある。

 撮影方法のヒントはかなり詳しくて、説明は画像処理にも及んでいる。
 比較明合成の技術によって新しい可能性が開けている反面、実際に肉眼で見るのとは異なる写真も撮れてしまうので、観光案内用の写真で盛られないように注意が必要だ。
 ここまでやってしまうと天体写真に近いのだが、天体写真で慣れているので、自分にはそこまでの抵抗はないとも言えた。

関連書評
星降る絶景〜一度は見てみたい至極の星景色 沼澤茂美

蛍の本
蛍の本
カテゴリ:写真・イラスト集 | 17:40 | comments(0) | trackbacks(0)

世界のかわいいけもの! 大渕希郷

 かわいい動物の写真集。
 最初にサーバルが出てきてマニアックだなと思ったら、次はアライグマ、お次はフェネック。カバが出てきた時点で「これ、けものフレンズだ!!」となった(途中の説明文でも暗示している)。
 トキは順番通りに出てこなかったが、ほ乳類の後に鳥類、は虫類の順番で並べられているせいだった。そこは譲れなかったらしい。

 ヨタカとニシアオジタトカゲは何事かと思いきや、ツチノコに誤認されているかもしれない生物とのことで、けものフレンズに染め尽くされていた。
 豆知識もおもしろいので、ファンにはオススメである。コツメカワウソがマレーシアでは漁業に利用されていたとは!

 スナネコがやっぱりカワイイ。フェネックはネコ科に負けないかわいさながら、イヌ科だったんだな。よく体つきを見れば納得である。
 あまりかわいいイメージのない動物にもかわいさを見つける写真集だけど、基本はかわいいオオアルマジロの爪が凶悪で怖かった。
 そして、かわいくても害獣だとハッキリ書かれるアライグマ。

関連書評
あさひやま動物園写真集 今津秀邦・多田ヒロミ

世界のかわいい け も の!
世界のかわいい け も の!
カテゴリ:写真・イラスト集 | 00:13 | comments(0) | trackbacks(0)

中国帝王図(THE EMPEROR OF CHINA) 皇なつき/画

 田中芳樹・井上祐美子・狩野あざみ・赤坂好美/文。
 黄帝から愛新覚羅溥儀までの歴代中国支配者(実権のない人物もいるが)を絵にして、中国関係の作品を書いている作家による解説を加えた画集。有名どころの帝王だけじゃなくて、日本人のカバーがあまい五代十国時代の帝王も描いてくれている。帝王の事跡を通じて、彼らが生きた時代についての知識も手に入れることができた。

 前蜀の王建が気に入った。イラストにもなっている燃えさかる桟道を剣で切り開いて駆け抜けたエピソードも強烈で忘れにくい。
 蜀の地方政権には印象的な支配者が多い気がする。

 春秋時代にさけるボリュームの問題も絡んでいそうだが、楚の荘王が描かれていなかったのは残念だ。重耳を厚遇したのが成王じゃなくて荘王だったら、さらに覇者ポイントが上がったんだろうけど、そうすると同時代だから覇者になりにくいか。

 田中芳樹氏の文体は特徴的で記名をみる前に何となく分かった。イラストを書いた皇なつき氏も一部の解説文を書いている。エピソードをふまえたイラストを描けるのだから、それだけのしっかりした知識を持っていても不思議はない。

関連書評
永楽帝〜明朝第二の創業者 世界史リブレット人038 荷見守義

中国帝王図 (講談社文庫)
中国帝王図 (講談社文庫)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 20:08 | comments(0) | trackbacks(0)

建設中。 勝田尚哉

 巨大構造物の建設中写真をあつめた写真集。すさまじいボリューム感をもった写真がつぎつぎと現れて、人間の営為が行き着いたところを思い知らせてくれる。
 ぼくにはとてもできない気分にさせられてしまうが、一人一人は自分の仕事をこなしているだけのつもりかもしれない。

 著者は建設会社で勤めた経験のある人なので、段取りの説明が専門的でわかりやすかった。
 高層ビルを建てるタワークレーンが解体時には少しずつ小さいクレーンを構築して大きなクレーンを降ろしていき、最終的なクレーンはエレベーターから搬出されることを知った。
 ずいぶんと無駄に感じられるけれど、それが一番コストパフォーマンスが良いのだろうな。ヘリコプターで降ろしてもらうわけにはいかないか。

 驚くのは橋を一晩でつないでしまう工事で、その重量もさることながら、寸法があわなかった場合の恐怖を考えて竦んでしまう。工事前に十分な検討をしているに違いないが、それにしても一晩で何とかしなくちゃいけないのは大変だ。
 詳細な図面や工事担当者の連続性がどうしても必要になる。きっと彼らを含めてインフラなんだなぁ。日本社会はちゃんとそれを評価できているのだろうか。

 あとがきが哲学になっていた。「建設中」と途中の状態なのに、「。」を入れているタイトルも哲学的だ。写真によって完成品として区切ったと言いたいのかなぁ。

建設中。
建設中。
カテゴリ:写真・イラスト集 | 15:22 | comments(0) | trackbacks(0)

目でみる地下の図鑑 こどもくらぶ

 植物・動物・人類の構造物、そして地球内部まで。
 普段目にすることのできない地下の不思議について取り上げた一冊。蟻の巣に石膏を流し込んで型を取るのって、蟻が犠牲になっているんだろうな……深さ4メートルの巣を掘ってしまったときは後悔したんじゃないかと想像する。それとも掘っても掘っても終わりが見えなくて興奮した?

 解説文で地下を掘ればマグマだまりに突き当たると明らかな間違いを書いていたのは残念だった。マントルは固体だし(大気圧になれば液化するにしても)、液状の外核もマグマだまりとは別物である。
 思いこみには常に警戒が必要だ。

 やっぱり地下洞窟の情報が楽しくて、心が躍る気持ちになった。
 アマゾン川の地下河川ハムザ川が物凄くて、目を疑った。深さ4km、幅200〜400km、全長6000kmって……地球の内部にはまだまだ未知が残されているんだなぁ。

 エヴァンゲリオンに出てきたジオフロントの模式断面図が収録されているのには笑った。

目でみる地下の図鑑
目でみる地下の図鑑
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0)

古代ガラス展 栄アートギャラリー 1983

 非常に古い展示会の冊子。カラー写真が表紙と最初の三枚しかなくて、他はすべてモノクロ写真になっているくらい古い。カラー写真を収録することのコストが垣間見える。
 しかも、カラー印刷の部分は片面印刷になっているのだ。現代の製本技術は凄い。

 載っている作品というか考古品はメソポタミアを中心とした地域のもので、ややイランの比重が高くなっている。
 正倉院にも関係しているカットガラスも興味深いが、地中海東岸でつくられた瑪瑙様の模様をもったガラスも製法から気になった。いや、カットガラスも製法が気になるなぁ。
 ガラス工芸品を見ると、いつもそうだ。そろそろ、ガラス細工のハウツー本も読んでみるべきかもしれない。
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:04 | comments(0) | trackbacks(0)

ガザ〜戦争しか知らないこどもたち 清田明宏

 21世紀に入ってからも4度の戦争を経験しているガザ。そこに生きるこどもたちや戦う医療従事者たちの姿を写した写真集。
 戦争の主体であるイスラエルやイスラム武装勢力のことには徹底的にふれていないので「戦争」という顔のない化け物が存在して、人々の住居を破壊して回っているように感じる。
 おかげで日本人読者には災害に似て感じられて共感しやすいかもしれない。

 苦労して建てた住居が数分の戦闘で破壊され、外気にさらされて生活せざるを得ない状況は本当に気の毒だ。半壊した建物などにしかたなく住んでいる人も多いけれど、地中海沿岸のガザは地震がありえる地域だったはず。
 もしも大地震が起こったら生じる被害はおそろしいものになり、戦争の被害そのものとも言える。

 ひどい状況だけど、写真にそこそこ緑が写っていたことは慰めになった。イスラエルの本によれば南の方は乾燥地帯だったはずだが、海岸にあるガザ地区の場合はそれなりに雨が降るのかな。
 ただし、無期限停戦後の豪雨で非常事態宣言という記述もあって……。

ガザ: 戦争しか知らないこどもたち
ガザ: 戦争しか知らないこどもたち
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:46 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の美しいウミウシ〜Sea slugs〜 パイ インターナショナル

 画面いっぱいのウミウシ写真に、種名のみのページが大半を占めるウミウシの写真図鑑。
 多様な造形に、多彩な配色をもつ海の美しい生物の姿を純粋に楽しめる。文字情報としては数回のコラムが挟まれていて、ウミウシに関するちょっとしたトリビアを知ることもできる。
 アオミノウミウシのカツオノエボシから刺胞を盗んで、触ってくる相手に発射する盗刺胞の性質は、自分の身を守るためにも知っておきたい。割と恐ろしい。

 他にはシンプルな名前のサフランイロウミウシなど色彩で目を楽しませてくれるウミウシがいれば、ピカチュウを連想させる配色とツノをもったカンナヅノウミウスもいる。緑色の穂が多数ついたオオアリモウミウシには迫力がある。
 濃い緑色でしわのあるミラーリュウグウウミウシは、ファミコンゲームFE外伝に出てくるラスボスのドーマ連想させた。風の谷のナウシカにでてくるオームに近いウミウシもいそうなものだけど、残念ながらピッタリのウミウシは見つからなかった。
 5000種もいればいつかは図鑑で遭遇できるかも?
 ウミウシは漫画家やゲームデザイナーにはモンスターの造形を考える上での参考になりそうだ。

関連書評
うれし、たのし、ウミウシ。 中嶋康裕

世界の美しいウミウシ
世界の美しいウミウシ
カテゴリ:写真・イラスト集 | 12:34 | comments(0) | trackbacks(0)

おとなの奈良 絶景を旅する 堀内昭彦・堀内みき

 奈良の土地を歴史を感じながら旅する写真集。決定的な瞬間をたくさん撮影していて奈良へのあこがれを膨らませてくれる。
 霧がでているときに撮影することで背景を消して、歴史ある風景だけを残すなんて……。

 桜や紅葉の写真も見事で、写真家が現地に通った回数が気になるほどだった。あじさいを大量に植えたお寺のあじさいがある歴史が50年しかないことに驚いたりもする。

 有名な歴史の舞台が身近に存在しており、いつでも眺めることができる環境に暮らしている人々の気持ちが少しだけ想像できた。景観を守ってくれているのは、とてもありがたい。
 生駒山地からみた大阪と奈良の対比が鮮やかなほどだ。あと、卵白を泡立てて作った銘菓きみごろもを食べてみたくなった。

関連書評
平城京のごみ図鑑 奈良文化財研究所 監修

おとなの奈良 絶景を旅する (奈良を愉しむ)
おとなの奈良 絶景を旅する (奈良を愉しむ)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 16:53 | comments(0) | trackbacks(0)

クオッカ〜世界一幸せな動物 山と渓谷社

 カピバラの後釜を狙っているらしき哺乳動物クオッカの写真集。
 極端に情報量の少ない中、クオッカのセリフとしてカンガルーの仲間であることを知った(巻末にまとまった情報あり)。カピバラに似ていても系統はかなり違う。進化の収斂って奴を感じる。

 世界一幸せな動物と言われているのは孤島に住んでいる警戒心のない集団でオーストラリア本土では人間がもちこんだ動物によって、ほぼ絶滅状態になっているそうだ。
 世界一幸せな動物の呼び名が悪趣味な皮肉に聞こえてしまうのであった。

 まぁ、かわいいとは思う。

関連書評
カピバラ 渡辺克仁

クオッカ 世界一幸せな動物
クオッカ 世界一幸せな動物
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:31 | comments(0) | trackbacks(0)
<< | 2/16PAGES | >>