にっぽんスズメ歳時記 中野さとる

 インスタグラムから出版へ。愛知県内でスズメの写真を集中的に撮っている中野さとる氏の本。
 スズメのさまざまなしぐさが見て楽しめる。スズメの生態についても導入部で解説がある。のどの黒さなど意識してみていなかったことを反省。
 春から夏にかけては子育てするスズメの姿が楽しめるそうなので注意したい。
 道に迷ったイエスズメを目撃したら幸せになれるかも――見ても気づかない予感しかしない。白いスズメは見間違えようもないが。

 愛知県内での写真という割には雪とスズメの写真もみられた。東三河の山間部がフィールドなのかな。
 刈り終わった田んぼでスズメが群れている姿は、なんとも季節感があふれていいものだ。群の写真をみるだけで、うるさい気がしてしまうところも微笑ましい。

関連書評
コンパクトデジカメで野鳥を撮ろう! ZERO CORPORATION編

にっぽんスズメ歳時記
にっぽんスズメ歳時記
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:45 | comments(0) | trackbacks(0)

古代ローマの別荘(ヴィラ) ジャクリーン・モーリー/ジョン・ジェイムズ/桐敷真次郎

 金持ちどもめ、結構な生活をしやがって……けっ!という僻みが湧いてくる一部クロスセクションのある図解ライブラリー。
 でも、奴隷をロボットにおきかえれば現代人が理想と考える生活に、そんなに遠くないところをローマ人も目指していたと感じる。あるいは未だにローマ人の理想の呪縛が現代人に残っているのかもしれない。

 ひとつの多角経営をしている農業ヴィラを舞台にして、そこで働く様々な奴隷の仕事をみることができる。
 実は奴隷よりも日雇い仕事の人がしんどかった可能性もみえてきた。「賢い」奴隷運用法として、病気にさせたら損だから、そのリスクがある仕事は日雇い人夫にやらせろとあるらしい。
 時代や仕事内容によって奴隷のしんどさは千差万別であって、単純化することが難しい。
 でも、主人への殺人があれば、その家の奴隷が全員死刑になるところは、やっぱり一蓮托生の面があることを示している。一人の奴隷がやけっぱちになれば、主人も同僚も不幸になるわけだ。

関連書評
中世の城 フィオーナ・マクドナルド/マーク・バーギン/桐敷真次郎
ヴァイキングの町 フィオーナ・マクドナルド/マーク・バーギン/谷口幸男

古代ローマの別荘(ヴィラ) (三省堂図解ライブラリー)
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カテゴリ:写真・イラスト集 | 14:40 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の魅惑のトンネル 洋泉社編集部 編

 世界のトンネルをあつめた写真集。最後には話題につかえるトンネル知識も収録している。
 写真の出典でアフロばかりが出てくるのでアフロのトンネルを抜けた気分になった。普通の定義のトンネルばかりではなく、トンネルを感じさせる光景も収録している。
 果樹が道にせりだして緑のトンネルになったものや、藤棚、鳥居などかなり自由に「トンネル」に定義していた。

 アメリカのトンネルはさすがに未来志向で、SFの雰囲気がある。日常空間にすると疲れそうだけど、観光でたちよって見る分にはよさそうだ。
 ヨーロッパの同種のトンネルは、どうにもセンスが合わず、心がざわついた。自然物や歴史的なトンネルはいいんだけどね。

 見開きいっぱいに写真を使った関係でトンネルの中心が、ページの継ぎ目に当たってしまっている問題は何とかしてほしかった。
 最後のトンネルQ&Aに出てきた鍋立山の難工事には恐れおののいた。トンネルボーリングマシンがスタート地点よりも押し戻されるって……世界で最も長い645mってタイトルの映画にできそうだ。
 リニアを通すため、現在もトンネル技術者たちによる伝説が紡がれているのだろうな。

関連書評
素堀りのトンネル〜マブ・二五穴

世界の魅惑のトンネル
世界の魅惑のトンネル
カテゴリ:写真・イラスト集 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0)

珪藻美術館 奥修

 単純な珪藻の写真集かとおもいきや、珪藻を思い通りに並べて絵を描いてしまうナノテクの産物だった!
 物凄く細かい作業に眩暈がしてくるが、そこまで想像せずに作品に集中すると、とても美しい。開幕のクリスマスツリーにはインパクトがあった。

 珪藻は分裂の関係でいろいろなサイズのものができて、作品をつくるときに便利とのことだったけれど、逆に考えると狙ったサイズを集めることが恐ろしく面倒くさくなる。
 たいていは壊れている殻が得られるみたいだし、本当によくやると感心する。

 自分の作品でも顕微鏡を覗いたときには意外性があって、それを最初に経験できるのが作者になるからハマってしまうのかもしれない。
 創作技術はみんな独自に開発していて人に教えない業界というところが一昔前の菊栽培みたいだ。

関連書評
美しい顕微鏡写真 寺門和夫

珪藻美術館 Diatoms Art Museum
珪藻美術館 Diatoms Art Museum
カテゴリ:写真・イラスト集 | 19:42 | comments(0) | trackbacks(0)

乗り物歴史図鑑 人類の歴史を作った船の本 ヒサクニヒコ

 丸太を抱いて泳ぐところからはじまったかもしれない人類と船の関係を現代まで追いかけていく絵本。体裁は絵本だが、すべての漢字にふりがなが振られているだけで大人でも鑑賞を楽しめる絵と文章になっている。絵は宮崎駿に似ていると感じた。柔らかいタッチなのに、よく描き込まれている。
 ただし、微妙な間違いはあるので注意が必要。
 マレー沖海戦で日本軍の飛行機が台湾から出撃したことになっていたり――実際は台湾の部隊が攻撃したのであって出撃地点は仏印である。地図のカルタゴの部分にフェニキアと文字がおかれていたりする。フェニキアの勢力圏ではあるけれども……エジプトの船だけ軍船の絵がない点が興味深い。
 赤壁の戦いの勝者を諸葛亮と書いていることも気になった。呉なんて言っても子供の読者にはわからないと考えたのかな。

 間違いがあるわりに軍艦が好きらしく関係するページが割合多い点が不安を感じさせた。
 捕鯨について欧米は鯨油目的で日本は全部利用したと書いているけど、最近異なる意見が話題になっていたのも気になる。先入観を育てないよう文章は話半分に読んで絵を楽しんだ方が無難であろう。

関連書評
黒潮を渡った黒曜石〜見高段間遺跡 池谷信之
古代祭祀とシルクロードの終着地〜沖ノ島 弓場紀知

乗りもの歴史図鑑 人類の歴史をつくった船の本
乗りもの歴史図鑑 人類の歴史をつくった船の本
カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:25 | comments(0) | trackbacks(0)

美しい顕微鏡写真 寺門和夫

 顕微鏡によって撮影された鉱物から生物、人工物までの見事な写真を収録した本。
 基本的には美しいという感想を与えてくれるが、生物の中には禍々しい奴もいるから注意が必要だ。ヒルガタクワムシの脚が目にみえて、ゴーストバスターズのマシュマロマンを1万倍不気味にした代物に思えた。
 絶望的なのはシンカイウロコムシの頭部で完全にモンスター。ページを開かなければ良かったと後悔した。SAN値が下がる。
 実害のある住血吸虫よりも実害のない連中が怖い外見をしているのも皮肉なものである――住血吸虫も十分に不気味なのだが。

 やつらに比べて珪藻類の美しさには癒された。円石藻の姿が、WEB漫画の胎界主に出てくる神獣石の元ネタなのか。
 まだまだデザインの可能性が隠れているなぁ。ウンカの幼虫が脚に「ギア」を持っていることには衝撃を受けた。車輪どころかギアまで作られていたとは……。

 最後を飾る人工物の強拡大写真にはナノテクのすさまじさを思い知らされる。微細構造をコントロールできるのも、それを観察できる顕微鏡技術があってこそだ。

 なお、キャプションには内容が疑わしいと感じるものがあった。たとえば皮膚の悪性腫瘍はホクロが元になっているわけじゃないと他で読んだけどなぁ……。

関連書評
結晶のいろいろ 増田高廣
世界の砂図鑑〜写真でわかる特徴と分類 須藤定久

美しい顕微鏡写真
美しい顕微鏡写真
カテゴリ:写真・イラスト集 | 21:42 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の衣装〜Clothes〜 PIE international(2回目感想)

 一国の中にもいろいろな民俗衣装あり。
 広い範囲にわたり、多くの民族が内在する国があるのだから、当然のことなのだけど、それを写真で直感的にきづかせてくれる写真集。
 特に中国は少数民族の民族衣装がいろいろ掲載されていて多彩さを感じさせた。なぜか漢民族の写真はなかった。女真族もなかったな。

 日本は京都の着物をきた女性(舞妓さん?)の写真が二枚あるだけで、けっこう違和感が強かった。
 他の国の写真も同じくらい強調されたものである可能性は意識するべきかもしれない。観光で民俗衣装を着ている場合もあれば、ハレの場面で子供に着せている場合もあり、日常的に着ている様子のおばさんおじさんたちもいる。

 どの写真にしても弾けるような笑顔をした人々の写真には胸を打つものがあった。表紙にもなっているペルーは流石に強い(アルパカも強い)。広さに対して寂しい感じのアメリカ合衆国との大きな違いを感じた。

関連書評
動きで見る民族衣装の描き方 シーン別描き分けのコツ248パターン 玄光社
世界の衣装〜Clothes〜1回目感想

世界の衣装
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カテゴリ:写真・イラスト集 | 17:39 | comments(0) | trackbacks(0)

遺したい日本の風景沙蛎次‘本風景写真協会

 遺したいと自分たちの死を念頭においている凄い写真集。遺す主体が撮影者とも、日本国民全体とも確定されていないが、世代をつなぎたい気持ちは伝わってくる。
 しかし、キャプションでは過疎化の文字がよく踊る。たまに村おこしに成功している例もあって、いちぶの風景は生き残れるかもしれないと希望を抱く。
 東北地方の山村風景については地震による被害も心配だ。2010年11月の写真などがあって、現状がとても気になった。今後も多くの風景が地震や火山噴火の被害をうけて、変化を余儀なくされていくのではないか。
 それらを取り込んで変化し続けていくものも、アクティブな山村風景だったはずだが、そこまでのエネルギーはなかなか期待しがたい。TPPの影響が心配だ。

 個別の写真では長野県飯田市上村「霧かくれの里」がすごい光景だった。ほかの写真集でもみた覚えはあるのだが、なんど見ても感動してしまう。
 作物としては蕎麦と蒟蒻とのことで、昔の厳しい生活が想像できる。
 もう一枚和歌山県有田川町清水の写真はまるで丸馬出しのような形状をした田圃が興味深かった。川のカーブ部分に存在しているので、治水の力でしっかりガードできるようになってから開発された田圃なのかもしれない。

 多くの写真で野焼きの煙が確認できて、山村がいまも息づいていることを感じさせてくれる。野焼きの煙は山村の息吹である。

関連書評
日本民家紀行 高井潔 とんぼの本
合掌賛歌供\硬鍔美写真集

遺したい日本の風景 (6) 山村
遺したい日本の風景 (6) 山村
カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:43 | comments(0) | trackbacks(0)

野生動物カメラマン 岩合光昭

 猫写真の人としても知られるが本領は海外での野生動物撮影にある著者によるいろいろな野生動物の紹介と、撮影論。
 自らを対象に一体化させるような姿勢での撮影は聞いているだけでもスリリングであり、ちょっと真似できそうにない。野生動物に遭遇したとき、シャッターを切る行動に意識を奪われてしまう自分はその雑念でやられてしまいそう。

 ほ乳類なら大丈夫といいながらもホッキョクグマには危険性を感じていることが面白かった。他でホッキョクグマは比較的安全な動物と読んだ記憶もあり、感覚の違いが興味深い。
 でも、裏表紙の花畑のホッキョクグマは絵本の中から出てきたみたい。

 アフリカの話ではチーターが草原のブービーとされている点が記憶に残る。ハイエナなどよりも弱く、ジャッカルよりはマシだが肉食動物同士の争いでは調子が悪いらしい。
 母チーターが4頭の子供を連れた写真はとても良かった。

 多くのペンギンで両足の太さが違う話は気になる。興味がないと言い切るイギリス人研究者もずいぶん偏屈だな……。日本の武士が刀のせいで足の太さが違ったらしいのを思い出した。

関連書評
極限の世界にすむ生き物たち 長沼毅
サボり上手な動物たち〜海の中から新発見! 佐藤克文・森阪匡通

野生動物カメラマン (集英社新書)
野生動物カメラマン (集英社新書)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 18:47 | comments(0) | trackbacks(0)

八九式中戦車写真集 吉川和篤

 八九式中戦車には軽戦車時代があった。ガソリンエンジンの甲型とディーゼルエンジンの乙型もあった。
 塹壕を乗り越えるための橇が追加されたり、トルコ帽形のハッチがあったりと、意外と派生の多い八九式中戦車の写真集。

 あまりに多くの八九式中戦車写真が出てくるので日本が戦車大国であった気分に浸れるが、総生産数が404台だったと書いてあって夢から覚めた。
 そりゃ戦場ではNOT FOUNDだわ……。

 初期にあった37ミリ戦車狙撃銃搭載型の八九式中戦車が気になる存在だ。対戦車戦なら、57ミリ砲タイプよりも使えた可能性はないかなぁ。
 まぁ、いくら改修をしていてもノモンハン事変の時点で古いのは否めないか。

 西住戦車隊長のことをはじめて知った。彼の八九式中戦車は写真で「みほ号」と読めるが実際には汚れのせいで「みずほ号」なんて豆知識もある。
 あとがきでは直接名前はあげなかったが、ガールズ・パンツァーに少し言及があった。

関連書評
ディーガー欺点鐚vsシャーマン・ファイアフライ〜ノルマンディ1944
パンターVS.T-34〜ウクライナ1943 ロバート・フォーチェック
ティーガーVS.IS-2スターリン戦車〜東部戦線1945 デヴィット・R・ヒギンス

八九式中戦車写真集 (~軽戦車時代から乙型まで~)
八九式中戦車写真集 (~軽戦車時代から乙型まで~)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 18:36 | comments(0) | trackbacks(0)
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