大人の恐竜図鑑 北村雄一 ちくま新書1315

 文庫で読みやすいイラスト付きの恐竜本。著者がイラストも描いているので考証についての説明に淀みがない。説得力がある。4ページに2ページのペースでイラストが挟まれていることもあって、スムーズに読めた。

 恐竜本界隈が抱えている問題について、いろいろ言及していて恐ろしくも興味深かった。問題児的な恐竜ファンの話には戦慄を覚える。少年の心で恐竜を好きになるのは良いが、何歳になっても少年のレベルで恐竜を語ることは弊害まみれである。
 憧れは理解から最も遠い感情なんだな……。
 ライターのページ単価が下がっているため、Wikipediaの引き写しが増えている話題まで気にしてしまうと、出版業界の問題について考え込んでしまうので、とりあえずおいておきたい。

 著者は恐竜が群れた説に対して、懐疑的ないし慎重な姿勢で一貫していて、なかなか新鮮だった。ボーンベッドだけでは群れの証拠とするには弱いと言われればなるほどである。
 少なくとも異地性の化石では……。

 さすがに著者の主張をすべて正しいと受け止める気にはなれなかったが、アイスバーンな恐竜本の中でも新しい知見を与えてくれる本だった。

大人の恐竜図鑑 (ちくま新書)
大人の恐竜図鑑 (ちくま新書)
カテゴリ:古生物学 | 12:40 | comments(0) | -

光る化石〜美しい石になった古生物たちの図鑑 土屋香・土屋健

 美しい化石の写真集。方解石や玉髄、黄鉄鉱などに置換された化石を筆頭に、見応えのある美しい化石の写真が収録されている。
 イギリスのサマーセット海岸から産するアンモライトの化石には王者の風格がある。青い遊色が一面にあらわれたプシロセラスは特にすばらしかった。
 国産でも結構きれいなアンモナイト化石があることも発見だった。

 変わったところではパージェス頁岩の化石が、角度によっては銀色に光るとして掲載されている。
 岩に張り付いた黒い影にしか見えないものが、いきなり銀色に見えるのはワンダーがありそうだ。

 説明文がやや単調に感じられてしまった点が残念だ。

光る化石 ~美しい石になった古生物たちの図鑑
光る化石 ~美しい石になった古生物たちの図鑑
カテゴリ:古生物学 | 00:06 | comments(0) | -

絶滅した哺乳類たち 冨田幸光・文 伊藤丙雄・岡本泰子・イラスト

 絶滅哺乳類図鑑(12000円!)のダイジェスト版であるらしいムック。平成14年の本なので、現在とは分類が変わってきている。鯨偶蹄目が出てこない!

 ウマやサイを代表とする奇蹄目が衰退したグループで、全体が絶滅の危機に瀕しているグループと知って驚いた。ウサギの仲間もあまり反映していないらしいし、一種をみていては分からないトレンドが理解できた。
 偶蹄目は反映しているのに、さらに鯨の仲間も加えて巨大化が進んでしまったわけだ。
 指が4本の奇蹄目には注意したい。重心が第三指の中心を通っていれば奇蹄目!

 南アメリカの絶滅哺乳類などには面白い名前を付けられたグループがいて、輝獣目などは少年の心をくすぐる。
 一種類だけでも生き残ってほしかったが、異節目であるアルマジロの仲間はそうして生き残っている奴らなので彼らまで絶滅しているよりは良かったのかもしれない。

絶滅した哺乳類たち
絶滅した哺乳類たち
カテゴリ:古生物学 | 23:26 | comments(0) | -

日本の古生物大研究 冨田幸光・監修

 古生代からつい最近まで、日本の古生物を紹介する子供向けの本。
 非常によくまとまっていて、奇蹄類から偶蹄類に繁栄する種が移り変わっていったことなど、わかりやすく説明されていた。
 やはり日本は広くて、いろんな時代の化石がなにかしら見つかっている印象を受ける。実際には抜け落ちている時代や環境があるとしても、一通りみれる状態になっている国は貴重なのかもしれない。

 北アメリカに生きる唯一の有袋類キタオポッサムが、南アメリカから進撃して定着したことも面白かった。
 負けてばっかりに思える有袋類の中にも気合いの入った種がいるんだな。

 新生代の化石では岐阜県の存在感が大きかった。
 瑞浪市は有名だが、可児市もかなりの存在感がある。やるじゃん岐阜県、まったくそれに比べて愛知県は〜。

日本の古生物大研究 どこで見つかった? 絶滅した生き物 (楽しい調べ学習シリーズ)
日本の古生物大研究 どこで見つかった? 絶滅した生き物 (楽しい調べ学習シリーズ)
カテゴリ:古生物学 | 22:49 | comments(0) | trackbacks(0)

サメ帝国の逆襲〜海洋生命5億年史 土屋健

 海の生物による覇権争いを描いた古生物の本。主役は軟骨魚類のサメである(そういえばエイの名前があがらない。濾過食性組と似たコースの扱い?)

 しかし、中生代も新生代も「新手」の紹介にページが割かれていて、サメは最後にあがってくる感じだった。
 大量絶滅でサメが生き残れたのは、肺呼吸のモササウルスと違ってサメは環境変化の穏やかな深海に逃げ込めるからであろうな(そういう仮説の紹介があったわけじゃないけど)。
 次の大量絶滅がこれまでと類似のものになったら、やっぱりクジラが絶滅して、サメが生き残る気がする。胎生も何らかのメリットがあるのかも――卵の方が大量絶滅に強いんだっけ?

 陸上でこれほど長い間覇権を握った生物がいないことを考えると、サメは本当に興味深い存在だ。
 残念なことは軟骨が残りにくいことだが、化石産地によっては体も残っているようだ。それなのに最近の「メガロドン」は歯しか見つかっていないことが意外だった。
 メガロドンは系統もホホジロザメにきわめて近縁な属とする説以外に「カルカロクレス」か「オトダス」に属する説があって著名なのに謎多い存在だと分かった。
 そこが世間の関心までかき立てる?

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シー・モンスター 太古の海の支配者たち ナショナルジオグラフィック
世界の美しいサメ図鑑 仲谷一宏・監修

海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲
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カテゴリ:古生物学 | 23:20 | comments(0) | trackbacks(0)

鳥類学者無謀にも恐竜を語る 川上和人 生物ミステリー

 恐竜にはよく分からないことが多いから楽しく想像を語れる。
 鳥類学者が歴史小説家みたいなことを言い出した!歴史学者だったら、わからないから楽しく補っていいみたいな言い方はできない。そういう意味では本書は通常よりも遙かに過去の時代をあつかった歴史小説といえるのかもしれない。
 まぁ、想像にも何らかの(こじつけに近くても)根拠を示しているところは、やっぱり学術よりだと思われる。

 ユーモアの効いた文章に踊らされながら、恐竜への関心をテコに鳥類への知識が増えた気がするので、著者の意図は果たされたと思う。
 Tレックスボーンステーキを酒の肴にされた恐竜学者の反応は?……日本は恐竜学者の勢力があまりないことも本書出版の追い風になったのかもしれない。
 これがアメリカでの英語出版だったら自称小心者の著者は……?

 もしも鳥類がいなかったら?+もしも哺乳類がいなかったら?の妄想は生態系のジェンガみたいだった。ひとつやふたつのブロックを抜いても倒れない(木が生長して穴が塞がる)が、いっぺんに大量のブロックを抜いたら全体へのダメージが生じるかもしれない。
 人類は、無差別に滅ぼしているわけじゃなくて特定の性質をもった種を狙い撃ち状態だから始末が悪い。

関連書評
そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)
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カテゴリ:古生物学 | 21:01 | comments(0) | trackbacks(0)

シーラカンス〜ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち

 藪本美孝・著。
 博物館に鑑定目的で持ち込まれる標本は、ブラジル産の魚類化石が一番らしい。それだけ市場に溢れているのだろうけど、国産で自分の手で取った化石でないことが残念に感じた。その場合は産地が分散してしまうから統計的に勝てないせいもあるのかな?

 本書はブラジル産の魚類化石を現生魚類のように鑑定できる図鑑を志向している。博物館学芸員には便利そうだ。世界に10個体しかない化石まで載っていて、市場で全てに遭遇するのは難しそうだが。
 ブラジルの産地紹介も興味深い。魚化石の入った石灰岩を床材に生活している現地の人が羨ましい。

 また、シーラカンス類の図鑑にもなっていて、こちらは世界中の標本が紹介されている。アフリカとインドネシアのシーラカンスについて、インド亜大陸の北上によって分布が分断された説が載せられていた。
 昔読んだ本ではインドネシアのシーラカンスが本家で、アフリカのシーラカンスはインドネシアから流れてきた連中の末裔とされていたが、その説とは対立しているなぁ。本書では両者の分岐は6000万年前とも言われている。
 また、現代に生きるシーラカンスは、他の滅亡したシーラカンスとはジュラ紀に分かれたらしく、知識の上で生きた化石の度合いが増した。

関連書評
NHKスペシャルDEEP OCEAN 深海生物の世界
8つの化石 進化の謎を解く[中生代]ドナルド・R・プロセロ

シーラカンス―ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち
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カテゴリ:古生物学 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0)

古生物ビジュアル大図鑑 洋泉社MOOK

 「生命誕生から古生代まで進化の謎と生命の神秘に迫る!」はアオリで、副題は「奇妙で不思議な古生物たちの世界」の方だった。
 古生物を古生代の生物と勘違いしているわけではないが、CGを使った古生代以前の生物紹介に特化している。メダカやヒトデのシルエットと比較したり、見開きページで原寸大(大きすぎる生き物は身体の一部が表示されている)で見せたりと、イメージしにくい古生物のサイズが伝わるように工夫が感じられた。

 オドントグリフスの舌歯周りがぬらっとしたCG表現になっていて、再現イラストよりも気持ち悪い。ネクトカリスみたいな生き物ならヌラヌラしていても気にならないんだけどな。
 CGの雰囲気がネクトカリス似すぎているため、石炭期のツリモンストラムが系統不明と言われてもネクトカリスの仲間にしか見えなかった。悪い方向にイメージが固定されていなければいいが。
 サカバンバスピスの目もCGのおかげで「つぶら」な感じが増しているか?まったくユニークな生き物たちだ。

 古生代で終わるため、ほ乳類の先祖である単弓類が絶好調の雰囲気だ。まさかこの後、恐竜の時代が来るとは、ここまでの流れからは想像しにくい。

 ヨーロッパの一部だった古代の大陸名アヴァロニアは、アーサー王伝説のアヴァロンから?ぶっちゃけ、かなり中二病の入ったネーミングだなぁ。

関連書評
恐竜・古生物ILLUSTRATED ニュートンムック別冊
絶滅した奇妙な動物シリーズ 生命のはじまり古生代 川崎悟司

古生物ビジュアル大図鑑 (洋泉社MOOK)
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カテゴリ:古生物学 | 12:25 | comments(0) | trackbacks(0)

絵でわかる進化のしくみ〜種の誕生と消滅 山田俊弘

 ダーウィンは偉大だったが権威で信じてはならない。どんな説も常に検証を続けることが大切だ。
 進化のしくみのみならず進化研究の歴史についても追いかけている。ネオダーウィニズムや進化の総合説(皮肉な呼び方はウルトラダーウィニズム)の流れを覚えておくと良さそうだ。
 遺伝に関する図解はお役立ち度が高い。

 著者は分類について「保守性」をけっこう気にしていて、これまでの研究を活かすためには、種に関する過去の定義にも配慮が必要と考えているらしい。
 最初の流れが重要であったことが分かる。ヨーロッパ発の研究でなければ種の見方は、今とは異なっていたかもしれない。

 ヤナギムシクイの一カ所をのぞき隣り合う亜種同士では交配可能だが、シベリアで隣り合った二亜種については遠く別の道を歩んできたので交配しないことが面白かった。
 二亜種以外が残って他が絶滅したら「別種」と判断する生物学者もいるはずだ。なんとも微妙なところにあるなぁ。

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化石の分子生物学〜生命進化の謎を解く 更科功
11の化石生命誕生を語る[古生代] ドナルド・R・プロセロ
嗅覚はどう進化してきたか〜生き物たちの匂い世界 新村芳人

絵でわかる進化のしくみ 種の誕生と消滅 (KS絵でわかるシリーズ)
絵でわかる進化のしくみ 種の誕生と消滅 (KS絵でわかるシリーズ)
カテゴリ:古生物学 | 16:06 | comments(0) | trackbacks(0)

化石の分子生物学〜生命進化の謎を解く 更科功

 化石の中から分子生物学的な証拠を見つけようとした科学者たちの物語。はたしてジュラシックパークは実現可能なのか――本書を読んだ感想では不可能といわざるをえなかった。
 まず、確実に恐竜のDNAと言えるものがみつかっておらず、今のところでている報告には否定的な反論が集まっている。琥珀の中についても厳しいようで唸ってしまった。
 さらに塩基配列が得られたとしても、古生物の場合は短くなってしまっていることが通常であって、完璧なDNAには程遠い。仮に古生物のゲノムを完全に得ようとしたら、どれほど大量の保存状態が特別な化石が必要か、わからない。
 残念なことだが、本書で紹介されたようなブレイクスルーが、再び起こる可能性に期待しておくことにした。少なくとも今後も挑戦する研究者は絶えないものと思われる。

 恐竜ほど古くない化石については分子生物学的な情報が得られていて、いろいろ興味深い「証拠」を積み上げてきている。北海道の縄文人遺伝子など、知らないことが多かったので勉強になった。何より読みやすかった。
 有名なミトコンドリア・イブの理屈も覚えておきたい。

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