大宇宙MAP〜天体の距離から見えてくる宇宙の構造〜 沼沢茂美・脇谷奈々代

 地球を中心にして、徐々に距離の離れた天体へ。地動説的な視点から描かれる宇宙の姿。太陽を中心にしないと内惑星と外惑星が入り乱れて出演してくる。まぁ、木星からは外惑星が連続するので、太陽を無視すれば岩石惑星とガス惑星でうまく分別できている。
 小惑星の大きさ一覧にイトカワが出演できていなかったのは、まことに遺憾というか、準惑星連中にくらべるとあまりにも小さすぎてドットにしかならないので仕方がない。

 なにげに新鮮で楽しかったのが、太陽のご近所さん恒星たちの情報だ。有名どころのアルファケンタウリやシリウスだけではなく、肉眼でギリギリみえる近傍恒星も四行で説明されている。
 アケルナルを読み間t……はっはっは。

 星雲は有名どころの有名画像が多かったが、コホーテク星雲K4-55は初めて知った。礁湖みたいで美しい。
 銀河系の外側に出ると、離れるほどに化け物だらけになっていく印象……目立つ連中がとりあげられるのだから当然か。M31の質量が天の川銀河の2倍であることを悔しがるのは宇宙最大規模のナショナリズムと言えるかな。
 ソンブレロ銀河はあいかわらずお美しい。ステファンの五つ子に相互影響していないNGC7320がいることで、五姉妹にひとり義妹が混じっている設定の作品にやさしくなれる気がした――などと意味不明の供述をしており。

関連書評
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大宇宙MAP ~天体の距離から見えてくる宇宙の構造~: 地球から宇宙の果てまで (大人のための科学入門)
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火星―探査衛星写真(普及版) NASA協力 小尾信彌・訳

 火星をはじめて周回して画像を地球に送ってきたマリナー9号による火星画像約180枚と、この本が書かれたときにミッションを始めていたバイキング探査機による画像36枚を収録した1976年の本。ただし普及版として2003年に刷られた第4版を読んだ。

 火星の地形が多くの点で地球や月との対比から理解できること、それでも解けない謎が残されていることが説明されている。
 解釈は古いものの目の前にあらわれた現象にたいして無力ではなく、なんらかの理解を与えている。地球での同様の地形の研究と、先行する月での蓄積があったればこそ、だろう。
 おかげで比較惑星学の創生期に立ち会っている気分になれた。

 ただ、やはり解釈が古いところはあって、クレーターの中央の盛り上がりを衝撃の反動ではなく、火山活動と解釈したがる傾向が見られる。河川が流れたと説明する場所を「月のリルに似ている」と表現するのも、矛盾している。太古の月に流水があったとするなら別だが……。
 そのような不満はあったものの逆に最新の解釈はどうなっているのか興味をかき立てられるところでもあり、地学頭の体操になった。断層の切断関係など、まるで教科書的な現象も捉えられている。

 画像はモノクロで解像度は100m程度、不鮮明だったりカメラのせいで現れる黒点が気になったりするものの、現在の火星写真集では見られない画像も多く収録されているはずで「処女地」の姿に目を楽しませることができた。

関連書評
火星〜赤い惑星の46億年史 Newtonムック
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火星―探査衛星写真
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火星〜赤い惑星の46億年史 Newtonムック

 フランソワ・フォルジェ、フランスワ・コスタール、フィリップ・ニョーネ共著、水谷仁Newton編集長訳!
 水谷編集長が翻訳した火星の2009年1月における決定版科学冊子。それまでの成果を様々な視点からまとめており、たいへん興味深い図解がたくさん出てくる。
 特に火星の大気循環に関する図には強い関心をそそられた。フランスからの地上観測が、風のデータに反映されていると別のページにあって、いまだに地上の天文台が大きな仕事をしていることに強い感銘を受けた。

 マーズ・エクスプレスの件をみてもフランスは大活躍で、工業製品一般のイメージを覆している。ドイツはもちろん、イタリアもいい機器を提供している模様。スウェーデンもお忘れなく。
 一方、イギリスはビーグル2に集中していたので謎の失敗によって、エクスプレスの活躍を誇りに思う切符を失った?……まぁ、何かしら貢献があるには違いないが、残念な結果になってしまった感じはある。
 ビーグル2の経験を活かして、エクゾマース計画で活躍してくれることを期待。

 この手の本は予算獲得支援の意味もあるのか、最後の方に探査計画の話をもってくるので、科学的な成果の印象が薄れてしまう弱点がある。まぁ、あとがきにあったように本書で紹介されていることもまだまだ仮説にすぎず、新しい探査によって覆されていく可能性があると認識するためにも、探査計画の話題は必要なのかもしれない。
 砂丘に見られるガリーを説明する理論はまとまったのかなぁ。本当に数百年前に形成されたなら、地軸の傾きによる大気圧の増加で液体の水が地表に存在可能になった説も違和感がある。もうちょっと古くないと、おかしいのでは?

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火星〜最新画像で見る「赤い惑星」のすべて ジャイルズ・スパロウ 日暮雅通・訳

 これおもしろい!これセンス・オブ・ワンダー!!惜しむらくは訳が
 2014年に至るまでの火星探査の成果を一冊にまとめあげた珠玉の一冊。高解像度の火星画像がおしげもなく使用されており、適当にページをめくるだけでも無限に時間をつぶせる。
 火星の地図帳のようでもあるが、全体像を描くことよりも、それぞれの特徴的な地形を紹介することを優先させている。全体が知りたければGoogleEarthで火星を表示するなり、なんなりして出来るからな。
 この本と重ねて使用することで、さらなる火星通になることができるはず。

 ただオービターの画像を見慣れていないとついつい凹凸が逆にみえてしまうのが辛いところ。実際に堆積岩の方が堅くて残った「逆転地形」があるから、ますますややこしい。
 人間の目は無意識に上側からの光線と影を解釈しやすいらしい。困ったときはクレーターを注視して感覚を取り戻そう。

 探査機ではESAのマーズエクスプレスが多くの魅力的な画像を提供していた。NASAが凄いのはしかたないにしても欧州にも遅れをとるのはぐぬぬぬぬ……おのれ、あの時のぞみが到達しておれば今頃!そんなことを言っているうちにインドの探査機も火星にたどり着いた。
 ソ連の探査機が火星に呪われているみたいに失敗しまくっているのはやっぱり怖い。赤い国が赤い星に嫌われるとは皮肉だ……まぁ、時差を克服する技術が必要だからな。当時のソ連には月よりも難しい目標だったのだろう。

 それにしても、あの流れの中でバイキングが2機(オービターとランダーを別に数えれば4機)まとめて成功させてしまったNASAの力はすさまじいものだ。
 なにげにランダーの方がオービターよりも長生きしたことを知った。オービターも現代でも通用する写真をたくさん撮っている。

 あと、老兵マーズ・オデッセイの成果も意外に多く収録されていて嬉しかった。MGSとMROの間に埋もれるものかと……能力が被らないように送り込んでいるので見せ場があるのは当然かもしれない。
 また、どんなに能力が上位互換でも季節変化を解析するためには過去の成果が重要になる。そういう意味ではハッブルや地上の天文台、はてはアマチュアまでもが撮像したデータもかなりの価値をもっている。
 複数のオービターが火星上空を飛び回る時代には生み出しえない価値を……。

 オービターの画像と地質学的な解釈に興奮する一方で、ランダーが写した岩だらけの画像にはちょっと冷めてしまう自分がいた。
 だから最近の探査機ほど青色を強調した画像を発表していると考えるのは穿ちすぎだろうな。たまに青く表現された砂丘を波打つ海に見間違えて幸せな気分を味わった。
 やはりテラフォーミングにはロマンを感じてしまうのであった。

関連書評
火星の人 アンディ・ウィアー 作/小野田和子 訳
未知なる火星へ――生命の水を求めて―― ディスカバリーチャンネル

火星: 最新画像で見る「赤い惑星」のすべて
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天体観測の教科書 惑星観測[編] 安達誠・編

 太陽系内の惑星をアマチュアが観測して、研究に役立つデータをえる方法を詳細に解説した本。
 スケッチから入って、動画撮影によるスタックと画像処理、解析ソフトを利用して画像から客観的なデータをえる方法が載せられている。また、天体望遠鏡の調整方法や動画撮影にむいた機材の紹介もあった。

 趣味だからこそ全力投球のいい例で、地上からの限られた解像度のデータでいろいろな事を明らかにしようとする姿勢に尊敬を覚えた。
 ここまでのレベルに到達できるアマチュア観測者は一握りに違いないが、惑星観測の延長線上に存在していることを知っておくのは励みになるはず。
 いまの自分はせいぜい双眼鏡で火星と木星・土星をみるくらいだが、そこで起こっている現象を常に意識していれば、楽しみも少しは増す。

 観測の主力はやはり火星と木星で、歴史的にも多くのデータが蓄積されていることが示されている。ついで土星と金星で、水星や天王星・海王星は相当難しいとまとめられていた。水星に至っては太陽に近いので危険ですらある。
 直接画像が示されてはいないが、木星の衛星から模様をえる例もあると言及されていた。ネット上でみたときは衝撃を受けたものだ。

 強く戒められているのが、画像処理を掛け過ぎて、利用価値のないものを作ってしまわないことだ。少なくとも処理前のデータをあわせて保存することで、冗長性を確保しておくべきだろう。

天体観測の教科書 惑星観測編
天体観測の教科書 惑星観測編
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THE PLANETS 太陽系 惑星 最新画像のすべて ジャイルズ・スパロウ/桃井緑美子

 太陽から太陽系外縁天体まで。
 既知の太陽系の構成員を最新画像で紹介していく写真集。本の版が大きいので、どの写真も見ごたえ十分。地球も惑星の仲間として同列に紹介されている様子が好ましかった。おかげで地球南極のバード氷河と火星の砂時計型クレーターの間にある明らかな共通点に気付くことができた。どちらも氷河が口を絞られたところを流れている(いた)。

 火星表面の画像は地球を上回り主力と思えるほどのボリュームがあって、自分が火星人だと勘違いしそうになった。それも地表の画像から軌道上の画像まで揃っているわけで、同じ条件を満たしている天体は他に月とタイタンだけだ(地球表面の画像は載せられていない)。
 人類というかアメリカ人のあくなき火星への興味を感じてしまう。やっぱり彼らの本能に根付いたフロンティアスピリットを刺激する何かが火星にはあるのではないか。

 画像の枚数は絞られているにしても、衛星の画像がしっかりと載せられていて、人間が自分の足で立てる大地の存在に好奇心をかき立てられた。
 ガリレオ衛星は見慣れたものだが――木星の潮汐力があまり掛かっていないカリストとガニメデの扱いが悲しいほど軽い――土星の衛星や天王星の衛星からは新鮮な印象を受けることがあった。土星の衛星イアペトゥスが梅干しの種に見えてしまってしかたがない。ヒペリオンはハチの巣に似ているし、土星の衛星は変わり種ぞろいだなぁ。
 タイタンの美しさに至っては憧憬の念すら覚える。

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太陽系惑星
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FAR OUT(ファー・アウト)銀河系から130億光年のかなたへ マイケル・ベンソン/檜垣嗣子

 地球近傍の星々からどんどん遠くの世界へ。宇宙誕生直後に生まれた銀河の画像、いわいるハッブル・ディープ・フィールドまでを収録した天体写真集。
 アマチュアレベルからは到底想像できない高解像度の画像が多く収録されており、天体の美しさに圧倒された。特に馬頭星雲など、星雲が本当に「雲」に見える点には感動を禁じえない。筋のひとつひとつが鮮明に目で追えて、大気中の雲の流れを見ていると錯覚しかねないほどだ。
 大気のない宇宙を舞台にしていることもあり、詳細すぎる画像に距離感が狂って、まるで自分が宇宙のかなたまで旅している気分になれる。

 そして、それは時間を遡る旅でもある。光が放たれた時代の解説が平行して載せられている構成が非常におもしろい。
 天体の本であるにも関わらず歴史分を補給することができた。歴史の中にも天体の話題は事欠かず、先祖の生活が星の巡りと共にあったことが分かる。
 考えてみれば私たちの身体を構成する元素もビッグバンや星の活動から生まれたわけで、我が身から宇宙の果て130億光年先まで、ひとつながりの世界なのだ。その事実の発見に驚嘆を禁じえない。

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双眼鏡で星空ウォッチング 第3版 白尾元理

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 放射圧が自己重力に優って超新星になる恒星のサイズであるエディントン限界の知識が新鮮だった。太陽の120倍だと即座に超新星爆発してしまうんだな。
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月のかぐや Kaguya on the Moon JAXA

 月探査衛星かぐやの活躍を、特徴的で魅力的な地形写真をメインにして描いている。名勝地巡りは伊達ではなく、想像力を最大限にかき立ててくれる写真が多かった。
 特に直線崖を側面から見た画像には感動した。さすがに月は浸食の影響をまったくと言っていいほど受けていない。数十億年前の地形が今に保存されていることも実感できて感動的だ――地球から月を見た場合でも、見えるのはとてつもなく古い地形なのだな。

 クレーターの名前に「キムラ」や「ヤマモト」があることを知って、表現しがたい気分になった。コペルニクスやティコと同一のセンスであると理解はできるのだが……ヨーロッパの人も似た感覚を覚えることがあるのかなぁ。
 まぁ、ニシナクレーターにはそんなに違和感がないわけで、使われている名字が一般的すぎることが原因かな。比率的に考えれば、一般的な名字ほど使われやすいわけでもある。

 かぐやの成果が探査が行われた当時では画期的なものであり、様々な新事実を明らかにしたことが分かりやすく書かれている。クレメンタインは著名だが、成果は思ったより限定的だ。
 佐々木晶氏による、2010年代の惑星探査は水星と月の比較が流行するというコメントが記憶に残った。月探査も水星探査も今後の展開が非常に愉しみだ。

月周回衛星「かぐや(SELENE)」 - TOP:公式ページ

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探査機はやぶさ7年の全軌跡 ニュートンムック別冊

 はやぶさの小惑星探査をじっくり描いたムック。サンプルリターンのカプセル検査中に出版されたため、その辺りの成否が不明とされている。実際は一回目の失敗のおかげか成功していて、500点の大成功を収めたわけだ。
 イオンエンジンの連続運転さえできれば100点の設定はずいぶん弱気に思えるけれど、のぞみやあかつきが辿った運命を考えれば納得できる話だ。まぁ、苦闘の末に失敗したのぞみの経験だって、はやぶさに活かされているわけで、成功or失敗と単純に考えるべきではないだろう。

 達成度表には入っていなかったけど、ミネルバでの探査に失敗したことは残念だった。開発者のインタビューが載っていて、着陸に成功していればどんなデータが得られたか説明されている。
 ターゲットマーカーという地味な機器――88万人の名前が刻まれてはいたが――の開発者にまで話を聞いているところは流石だと思った。小道具に見えても多くの検証がなされていることが分かって感動した。
 イオンエンジン担当の人はあれでもまだ機能をしゃぶり尽くしきれなかったところがあるようで……マイクロ波タイプのイオンエンジンの今後が楽しみだ。

 後継ミッションのはやぶさ2も高い目標を掲げている。はやぶさ並の活躍を期待してしまうとハードルが高すぎるが、それでも次はもっと上手くできると信じたい。


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探査機はやぶさ7年の全軌跡―世界初の快挙を成し遂げた研究者たちのドラマ (ニュートンムック Newton別冊)
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デジタルカメラによる月の撮り方 誠文堂新光社

 ずばりタイトル通りにデジカメで月を被写体に写真を撮る方法をとことん突き詰めた本である。身近で多少天候が悪くても見ることが出来て、確実に撮り甲斐がある。そんな月とさっと取り出して、失敗が苦にならないデジカメの相性の良さを活かしている。

 最初の方はデジカメの機能をいろいろ解説してくれるので、月を使ってデジカメのマニュアル撮影機能を学習するのに良さそうだった。コンパクトデジカメでもシャッタースピードさえ設定できれば、割と写真が撮れるものだ。
 それがなくて真夜中の写真が無理でも、昼の月なら露出が合う。その辺りのことも、ちゃんと解説されていて、初心者でも置き去りにしない感じが良かった。

 後半では月の解説やマニアックな構図や現象の話題が増えてくる。写真を撮る習慣をつけることで月に親しみ、季節感を身につけることができるなら、それだけでも有意義なのではないか。

デジタルカメラによる月の撮り方
デジタルカメラによる月の撮り方
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