鉱物キャラクター図鑑 いとうみつる・イラスト 松原聰・監修

 鉱物をキャラクター化した子供向けの図鑑。化学組成などのデータは載せられておらず、鉱物がそのまま読者に語りかけてくる体裁である。写真の一枚もついていないところは、非常に思い切りが良いといえる。

 ひすいが南九州の言葉遣いをしていたのだが、北陸の言葉をしゃべってるわけにはいかなかったのか?無理にでも個性の演出をするために産地との辻褄も無視された例だった。
 常にギプスでデザインされている石膏くんみたいな悲しい例も……炎色反応の花火を背負った天青石は恵まれている。

 色に特別な意味があると考えられて、ざくろ石が銃弾に使われたことがあるとの説明は初耳だった。たくさんの鉱物図鑑を書いてきた監修者なので、ネタ集めに余念がないのか。
 ドロマイトを使ったセメントは、ふつうの方解石だけで作ったセメントとは違いそうだ。そういえばドロマイトから焼かれた陶器なんかも研究されていたそうだ。

関連書評
鉱物・岩石紳士録 松原聰・北村裕花
フィールドベスト図鑑 日本の鉱物 松原聰

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カテゴリ:地学 | 09:55 | comments(0) | trackbacks(0)

石ころがうまれた〜ビロード石誕生のひみつ 渡辺一夫

 著者が三保の松原でひろったビロードのような手触りの石。その出現場所を求めて近くの川を遡上して探査する様子が子供向けの本になっている。
 地質学調査の基本を具体的な例を使って説明してくれている。

 最後の方は目がビロード石モードになっていて簡単に見つけられたという経験談がとても良くある光景で共感できた。
 著者が調査を行った安倍川は、紫色のもっと珍しい斧石も河原から拾える。調査の途中で遭遇したはずなのだけど、読者の関心を分散させないためか言及はなかった。口坂本ではニッケル華も採れたはず。もっとも上流の方では砂金も採れる。
 著者がとった簡単な地図でそれぞれの産地の地名が確認できた。あのページはとても便利で、地図のページを指で押さえながら読み進めることになった。

 ビロード石が蛇紋岩であることは予想ができたのだけど――いちぶの専門家は使っている呼び方のはず。野外実習で聞き覚えがある――産状については知らなかったので勉強になった。著者のように苦労して自分の足でみつければ本で読むのとは桁違いの学習効果が得られるはず。
 その点ではちょっと羨ましくなった。

関連書評
実験・観察・ものづくり7〜岩石・化石のなぞ 角谷重樹・相場博明

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石ころがうまれた―ビロード石誕生のひみつ (地球ふしぎはっけんシリーズ)
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カテゴリ:地学 | 22:06 | comments(0) | trackbacks(0)

はじめての古生物学 柴正博

 陸橋説はまだ死んでいなかった!入門書的なタイトルに反して意外に挑戦的な内容をもっている。恐竜の隕石絶滅説にも立ち向かっているし、定説に囚われないことに使命感すら覚えていそうな著者である。
 れっきとした東海大学の先生なので、もちろん根拠はあげているが、オッカムの剃刀で処理すれば別の解釈が優位に立ちそうな気はする。まぁ、自分の印象にすぎないので徹底的に議論が行われれば新しい定説が生まれてくるのかもしれない。
 著者も述べているように地質学の証拠はページとばしのものにならざるをえず、そこに解釈の自由が生まれてしまいそうな点は困ったものである。
 ゾウの骨から長い鼻を復元することは困難だが、恐竜のブラキオサウルスなどにも長い鼻があった可能性を否定することは難しいと著者は指摘している。
 それでも証拠は増えるいっぽうで、減ることはない。本書を読んで、著者に育てられた未来の地質学者たちの活躍に期待したい(個人的には最初の一冊にしない方がいいと思うけど)。

 さまざまな種類の生物などを網羅的にあつかっており、図も統一された雰囲気で見やすかった。

関連書評
地質調査入門 柴正博 東海大学出版部

はじめての古生物学
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カテゴリ:地学 | 18:56 | comments(0) | trackbacks(0)

図説 日本の湖 森和紀・佐藤芳徳

 日本の代表的な湖の基礎的なデータと歴史がまとめられている。
 琵琶湖は圧巻の日本一位だったが、意外と名前の歴史があさく、測量によって琵琶に似た形状が認識された江戸時代中期以降とのことだった。また、集水面積が滋賀県の96%にも及ぶとのことだった――やはり滋賀県は琵琶湖県である。

 人間との関係によって大きな変化を余儀なくされている湖も多く、水を発電用にもっていかれたり、海とつなげられて海水が進入したり、生息する生物にとっては堪らないであろうイベントが起こっている。
 そもそも生きている魚がいない状態から放流が行われた例も紹介されている。
 オオグチバスやブルーギルの存在についても、つとめて平静に語っている点が印象的だった。

 個人的には油ヶ淵を紹介してほしかったのだけど、最後の表に名前が載っているだけに留まった。日本一汚い湖ランキングで一位をあらそった手賀沼は紹介されているのに――やはり関東か、関東だからか!

 仁科三湖のならびがレバントの死海とガリラヤ湖の並びを連想させて興味深い。三方五湖については湖底堆積物の研究で知っていたので、特に強い関心をもって読むことができた。

関連書評
時を刻む湖〜7万枚の地層に挑んだ科学者たち 中川毅

図説 日本の湖
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カテゴリ:地学 | 00:09 | comments(0) | trackbacks(0)

「地球科学」入門 谷合稔

 地球の誕生から日本人の誕生まで。地球の歴史を一冊におさめた本。前ページカラーで、大量の画像を収録している。
 地球の悲鳴と題した環境問題を中心的にあつかったコラムもあって、地球環境に関心が高い人に向いている。

 ただし、本文は隙が見受けられ、学術的正確性に無頓着に感じられる部分もあった。コケを菌と表現していたり、ウミサソリの載ったヘッセルの本の表紙をバージェス生物群のものと解説していたりする。
 だんだん何のために読んでいるのか……という気分になってきた。「よくわかっていません」は真摯なのに、妙に印象に残ってしまう。

 ハワイのホットスポットが南に動いているために天皇海山列が北に曲がっているらしいなどの新しい知識も得られたので巧くつまみ食いしておきたい。

関連書評
惑星地質学 宮本英昭/橘省吾/平田茂/杉田精司
大地と海を激変させた地球史46億年の大事件ファイル ニュートンムック

「地球科学」入門 たくさんの生命を育む地球のさまざまな謎を解き明かす!
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カテゴリ:地学 | 21:43 | comments(0) | trackbacks(0)

日本の白亜紀・恐竜図鑑 宇都宮聡+川崎悟司

 日本各地から得られた白亜紀の化石を恐竜を中心に紹介していく。恐竜だけではページが埋まらないのか、モササウルスなど恐竜以外の生物も載っている。

 南から北に産地ごとに当時の生態系が想像できる復元イラストを載せてくれていて、なかなか刺激的だった。
 化石の一部は発見されているが、種の同定には至っていない――あるいは新種記載できない――生物の情報も取り込んで、積極的に復元している。
 確実性は落ちるだろうけど、イメージは豊かにできる。

 恐竜関係の新進気鋭な研究者を紹介するコラムもある。最後に紹介されたのはサックス演奏者で、研究者ではなかったけれど……恐竜の深くて広い影響力を知ることができた。

 おそらくお約束のハルキゲニたんは鬱陶しい。彼女の担当部分は二度は読めない……。

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日本の絶滅古生物図鑑 宇都宮聡・川崎悟司

日本の白亜紀・恐竜図鑑
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カテゴリ:地学 | 21:49 | comments(0) | trackbacks(0)

鉱物・化石アルバム 鉱物編 川辺伸一

 愛知県立学校につとめていたアマチュア鉱物コレクターの著者が採集時の貴重なメモと一緒に戦利品を写真で紹介してくれる本。
 あいうえお順に収録されていて、割り切った形ゆえの検索性の高さがある。紫水晶が「ま行」に入っていたりするので、慣れるまでは注意が必要かもしれない。
 標本をハンマーで殴ったときの結晶の壊れやすさなど、現場で採集してトリミングした人だからわかる情報が載っていて興味深かった。
 産地の荒廃情報については溜息しかでない。

 個別の標本をみていくと、大佐町大佐山のジルコンがものすごく綺麗で宝石級だった(ただし2mm)。亀山市大谷鉱山のスコロド石も個人的なイメージとまったく違う石の花じみた美しさがあった(ただし2mm)。テルル石も透明で小さかった(今のコレクターから見れば採集できているだけでも幸運である)。
 田口鉱山でもバラ輝石の結晶が得られることは初めて知った。パイロクスマンガン石ばかり血眼になって探しているのも芸がない(マナー違反を伴わなければ否定はしないが)。

 そのほかベゼリ石や紫水晶などは複数の標本が紹介されていて、どれもが美しくて魅了された。尾小屋鉱山の紫水晶にも透明のものがあるのだなぁ。
 行動範囲の点からも自分に真似できるとは思えないが、なかなか刺激になる本だった。

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カテゴリ:地学 | 18:30 | comments(0) | trackbacks(0)

日本の絶滅古生物図鑑 宇都宮聡・川崎悟司

 古生物界のダブルサトシ!化石・イラストゲットだぜ!!
 日本で確認された古生物をイラスト化して紹介する一冊。なかなか豊かな情報が日本に残されていることが分かる。地層の大きさから断片的になりがちとはいえ……。

 ミエゾウの牙が大きすぎて食事に不自由をしていないか心配になった。下顎にも牙の生えたゴンフォテリウムみたいな奴もいたわけで、本人は不自由を感じることはなかったのだろう。

 異常巻きアンモナイトはやっぱり日本を代表する化石。有名なニッポニテスはまだ良いけれど、ディディモセラスなんてほとんどうんこではないか。黒いアイスクリームなんて表現がわざとらしい。
 まぁ、生きているときは黒ではなく綺麗な色をしていたはずと解説がついていた。「月のおさがり」の逆バージョンだな。

 一部、化石産地の情報についても詳しく著者(宇都宮氏)の経験談が興味深かった。化石採集者の名前がついた新種がけっこういるみたいで、名誉を求める人にも向いた趣味かもしれない。

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産地別 日本の化石750選 大八木和久
ハルキゲニたんの古生物学入門〜古生代編 川崎悟司
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日本の絶滅古生物図鑑
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カテゴリ:地学 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0)

絵でわかる古生物学 北村雄一・著 棚部一成・監修

 古生物学の入門書に適当。シンプルなイラストとわかりやすい文章で地質時代と化石になりやすい生物、地学の基本について教えてくれる本。
 研究者の名前がたくさん出てくる点でも勉強に向いていそうである。

 数多くの研究手法が開発されてきたことが分かって、彼らの頭の良さに圧倒されてしまう。だが、ひとりひとりが多くの時間をかけて、それらの方法を開発してきたのだと考えれば、劣等感は抱かずに済むはず。
 ただただ感謝である。今後も有用な研究手法が生まれてくれますように。

 本のタイトルにも入っている絵は、説明のための図の側面が強く、それ単独で楽しむことには向かなかった。スケッチとして見れば最小限の線で特徴をとらえていて、とても上手いスケッチだ。
 単弓類、双弓類の説明など、絵のおかげで理解しやすかった。

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恐竜はホタルを見たか〜発光生物が照らす進化の謎 大場裕一

絵でわかる古生物学 (KS絵でわかるシリーズ)
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カテゴリ:地学 | 20:15 | comments(0) | trackbacks(0)

岩石薄片の作り方 力田正一 グリーンブックス106

 研究用の岩石薄片をつくる方法を短く的確にまとめた本。
 徹底的な人力による作り方を最初に紹介していて、求められる膨大な時間へのイメージにおののいた。最初からいい薄片ができるならともかく、技術向上のための時間もあるわけで……地学者が薄片に費やしてきた時間の積算はどうなっていることやら。

 砂などを薄片にするための特別な方法も紹介しており、膨潤性試料を塩化カリウム水溶液で研磨する手順の複雑さには笑ってしまった。水をエタノールで置換したと思ったら、エタノールをキシレンで置換していた。
 カナダバルサムを溶かすあれこれもあって、なかなか錬金術師の怪しげな実験に近い雰囲気がある?

 それはそれで楽しそうだが、染色には危険な薬物も出てくるし、研磨機を使えば回転体による切り傷の危険は常につきまとう。
 薄片をつくる学生には楽しみをみつけながらも、緊張感をもって作業してもらいたい。

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石ころ博士入門 高橋直樹・大木淳一 全農協
オーストラリアの荒野によみがえる原始生命 杉谷健一郎

岩石薄片の作り方 (グリーンブックス 106)
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