宝石のほんvol.02翡翠 飯田孝一 亥辰舎

 翡翠だけにこだわった宝石の本。産地や鉱物学や歴史的な由来まで翡翠について大量の写真付きで説明している。
 巻末の偽翡翠図鑑には感心してしまった。偽物が多いのは、それだけ翡翠が魅力的ということだ。まぁ、透明度が低い鉱物であっても翡翠だと言い張れば高い価値を主張できる側面もありそうだが……硬度が翡翠と同等や低い鉱物が多かったので、そこで確認できると思ったのに、最後にエメラルドが出てきた。

 紹介されている写真の国産翡翠は非常にレベルが高い。表紙になっている翡翠は輝くような明るい緑を示しているし、裏表紙になっている翡翠は自形結晶がわかる珍品である。
 著者によれば日本の近い翡翠産地でも小滝と青海川では違いがあるらしい。青海川産のものがミャンマーに近いという。

 よく言われる最高級の翡翠の色「琅玕」が、著者の説明によれば日本人の勘違いした呼び名であり、なおかつ色合いも他の図鑑が説明しているものとは違っていて驚いた。
 31Pの写真にあった深い緑色の翡翠もこれはこれで確かに綺麗だが……。

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翡翠図鑑1 郭穎

翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)
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岩石概論 宮城一男 共立出版株式会社

 1983年に書かれた当時の岩石に対する分類が概説された本。
 今となっては古い部分もあるけれど、だからこそ昔の研究の流れに触れることができた。
 大理石は商品名で、結晶質石灰岩とすることを推奨しているけれど、自分は大理石が石灰岩の変成岩だと習った。あるいは凝灰角礫岩は死語になったと書かれているのに、この本のずっと後に習った。

 用語の違いは時代の違いだけじゃなくて流派の違いだったりするから、油断ならない。知識と違う部分はどうしても引っかかってしまう。しかし、だいたいにおいては学んだことと矛盾はなかった。
 プレートテクトニクスがまだ信じられていなかったことは堆積岩の生成論に限界をもたらしていたけれど……。

 岩石薄片の顕微鏡観察については詳しく取り上げられていて、当時における研究手法の主力であることが感じられた(もちろん今でも重要であろう)。
 ここまでは習っていない気がしながら読んでいたらコノスコープを使ったことを思い出し、自分が忘れているだけだと分かった。

関連書評
岩石薄片図鑑〜精細写真で読み解く鉱物組成と生い立ち 青木正博

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岩石概論
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地すべり山くずれの実際〜地形地質から土砂災害まで 高谷精二

 地すべりと山くずれは異なる。情けないことに今まで知らなかったが、現象としては明確に区別できる二つをそれぞれ詳しく研究してきた結果をまとめた本。

 地すべりは災害であると同時に恩恵にもなりえる現象で、地すべり地は農地として利用されて、豊かな実りをもたらしてきた。平地よりも収穫がよいとの分析結果まで載せられているから驚きである。
 地質や湧き水の関係以外に土地が傾斜していることによる日照の関係もあるかもしれないが……農地に開発されているのは南向きの斜面ばかりなのか。わからないが気になる。
 粘土としてスメクタイトの存在が重要な事も覚えておきたい。

 山くずれは地すべりと違って急激におこる現象で、土地利用もほとんどされていない。地すべりよりも研究が進んでいない様子だ。そして規模は比較的小さい。

 著者は元々農学の分野から研究をおこなっていたらしく、工学や理学との用語使用の違いもまとめてくれている。粘土・シルト・砂の粒径がそれぞれの分野で別々に設定されていることを知って驚いた。
 なかなかややこしいが、関連する分野が連携して研究していかなければいけない関係にあることは明らかだ。すりあわせは今後ますます必要になっていくと思われ、こうやって比較してまとめてくれている本は重要である。

関連書評
写真に見る 地質と災害 ―応用地質の見方・考え方― 千良木雅弘

地すべり山くずれの実際: 地形地質から土砂災害まで
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日本の屋根 長野県の鉱山と鉱石 市川正夫

 長野県からは石油や天然ガスも採れていた。金属を取るための鉱山にかぎらず、砥石や石灰岩、石油などまでの採掘を含めた長野県における鉱業の歴史を鉱山ごとに知ることのできる本。
 地形図で現地までの経路も説明されているので親切である。種本に引きずられているのか、やや乱文気味なのは気になった。

 鉱物採集で行けそうな場所は限られているし、著者もあまり勧めていない。
 それよりも鉱山の歴史が消滅することに強い危機感があって、かつての鉱山関係者への聞き取り調査などを積極的に行っているところが興味深かった。
 後醍醐天皇の息子、宗良親王の名前が何度か出てきて、長野県の歴史に関わっていることを知った。

 諏訪市の鉄平石みたいに現在でもうまく採掘を続けているところがあるのは何となく嬉しい。大鹿村の山塩もおもしろい。ちょっとした地域興しで天然ガスを利用してみる動きなどもあるにはあるらしく、将来の動きが気になった。
 でも大半の鉱山は草木に埋もれていくのだろうなぁ。

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日本の屋根長野県の鉱山と鉱石―鉱山開発の歴史と現状
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カテゴリ:地学 | 23:22 | comments(0) | trackbacks(0)

写真に見る 地質と災害 ―応用地質の見方・考え方― 千良木雅弘

 地質が原因となって発生する災害のいろいろな例を豊富な写真や図で解説してくれる本。
 自分が地雷原の上に住んでいる気分になってお尻がムズムズすることこの上ない。そういう危険な地帯の例を取り上げていること、危険地帯でもいつ災害が起こるかは分からないことも、理屈では理解できているのだが……。

 例が多彩すぎて覚えきれなかったが、流れ盤・受け盤くらいは覚えて起きたい。線状凹地ができる理由の説明がわかりやすくて参考になった。どちらも地層が関係している知識だな。

 地崩れが谷底に流れ落ちた模式図では、地崩れ堆積物がすべて川に削られるように描かれていた。大雨が来るまでは対岸側に残る場合もあるのでは?残った場合は地質屋を混乱させる迷子の地層になるんじゃないかと想像した。
 北欧やニュージーランドなど海外の写真も取り上げられていて興味深かった。北欧には地殻の上昇によって起こる地崩れなんていう意外な災害があることを知った。

写真に見る 地質と災害-応用地質の見方・考え方- (なし)
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タイトルのカッコなしの意味がまるでわからん。Amazonのミスとしか思えない。
カテゴリ:地学 | 23:10 | comments(0) | trackbacks(0)

世界恐竜発見地図 ヒサクニヒコ

 世界中での恐竜発見状況を地図とイラストで感嘆に把握することができる。また中生代の三つの時代を色分けしており、どの地域からどの時代の恐竜化石が発見されているのかも一目で分かる。

 そのため三畳紀の化石産地が世界的にみても少ないことがわかった。ジュラ紀の産地すら限られており、大規模なものは白亜紀の産地ばっかりに思えてくる。三畳紀の恐竜が紹介されていると思ったら魚竜だったりする。
 時代が下るほど恐竜が繁栄したことが感覚的に感じられて、その絶頂において滅んだことが尚更ミステリアスに思えてくる。まぁ、鳥類で生き残って現代も繁栄していると解釈すれば、そうでもないのだが。

 著者は同じ恐竜のイラストでもコピーせず産地ごとに別の絵を描いている(何かの情報を取り入れて特徴にしているのだろうか)。また、歯だけしか見つかっていないような化石にも全身の復元図を用意している。
 科学的な「正しさ」からは離れた姿勢であるが、視覚的にはとても分かりやすかった。

 あと福井県勝山市で日本産の名前の付いた恐竜7種のうち5種が発見されているのだが、しつこく「フクイ」ばかり名前につけていて――コシサウルスの越も越中から取っている――ひとつくらいカツヤマにわけてやれと思った。
 フクイサウルス、フクイティタン、フクイベナトル、フクイラプトル……慣れれば覚えやすいのかなぁ。確実に名前の付きそうな「ムカワリュウ」の動向にも目が離せない。

 巻末で恐竜が展示されている博物館に「笠岡市立カブトガニ博物館」が含まれていて、生きた化石のカブトガニとは言え脱線しすぎじゃないかと思った。一体や二体じゃなくて四体の恐竜全身骨格レプリカと一体の首長竜全身骨格があるらしい。なんなの?

世界恐竜発見地図 (ちしきのぽけっと)
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新版 再現!巨大隕石衝突〜6500万年前の謎を解く 松井孝典

 6500万年前に恐竜を絶滅させた(断定)巨大隕石について、20世紀からカリブ海での研究をおこなっていた著者たちによる地質調査と津波シミュレーションがまとめられている。
 1999年に出版された旧版に、最新の情報をまとめた6章をくわえた2009年の新版になる。2019年に第3版を出してくれることを期待したい。

 多くの研究チームがカリブ海に注目する中で、著者たちのチームが目を付けたのは、アメリカ人が調査しにくい社会主義国のキューバだった。歴史研究において日本人がイランで活躍している感じである。
 手探りのまま現地に飛び込んで、共同研究を結実させた行動力がすばらしい。さすがは若い頃にユーラシア大陸を自動車旅行して、行ったことのない国はあまりないと豪語する著者である。
 そんなアドバンテージも、革命聖地近くの調査では、キューバ人と同じスペイン語をつかうスペイン人に負けている。恐竜戦争ほどではないが、生き馬の目を抜く研究競争がここでも展開されている。

 著者は地質屋ではないのだけれど、それだけに地質屋の仕事を新鮮に感じて、「若者のフィールド調査離れ」に危機感を覚えている。地質図の整備などもまさに「基礎研究」の一種であって大事なものなのだけど、本書がそれが理解される一助になってくれれば嬉しい。

 あと、グラフが全て手書きで味があった。

新版 再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く (岩波科学ライブラリー)
新版 再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:地学 | 21:47 | comments(0) | trackbacks(0)

絶滅したふしぎな巨大生物 川崎悟司

 各時代の巨大生物をカラーイラストで紹介する古生物図鑑。巨大生物にこだわることは偏りであるが、汎用性が低いがゆえに時代の特徴を写し出している面もある。
 たとえば高い酸素濃度によって昆虫でも巨大化できたり、低い酸素濃度によって気嚢システムをもつ恐竜が有利になったりする。

 ティラノサウルスは二回にわけて紹介されていて、ライバルのトリケラトプスはトロサウルスを加えてアクロバット的に二回。その二種類がトップかと思いきや、マンモスが三回分も情報を与えられている。
 ただし、マンモスの中にはさらに細かい分類があるので、ちょっとずるい。

 体重700kgの巨大ネズミ「フォベロミス・パッテルソニ」や巨大ナマケモノ「メガテリウム」、サーベルタイガーによく似た有袋類「ティラコスミルス」など北米大陸と繋がる前の南米大陸にはおもしろい哺乳類がたくさんいたことが分かる。
 自然な現象とはいえ、ニッチ争いによって大量の絶滅動物が出たことが残念に思えてしまった。

オールカラー完全復元 絶滅したふしぎな巨大生物
オールカラー完全復元 絶滅したふしぎな巨大生物
カテゴリ:地学 | 20:09 | comments(0) | trackbacks(0)

衛星画像で読み解く 噴火しそうな日本の火山 福田重雄

 気象庁に24時間監視されている活火山とそこまではされていないが活動的な一部の火山のランドサット衛星解析画像を解説付きで載せた本。
 ロシアに実行支配された国後島の爺爺岳がみられるのも、衛星画像であるおかげか。下手に開発するよりも、あのまま残しておきたい気持ちになった。
 ランドサットの撮影対象の関係があって、小笠原諸島の火山は収録できていない点が、すこし残念だった。それでも火山島の写真はそれなりに載っていて――元島の桜島も――ひとつの完結した世界が手に取るように観察できる点は楽しかった。

 基本的に画像はトゥルーカラー1枚とフォールスカラー3枚で同じ領域を紹介している。
 フォールスカラーは植生がわかりやすいバンド234の合成画像と、地熱活動のわかりやすいバンド246の合成画像、そして溶岩のわかりやすいバンド457の合成画像が利用されている。
 最初から最後まで読んでいれば、多少なりとも見方が身についてくる。246の合成画像を駆使すれば天然温泉を探すことも可能(おそらく同じ著者の本で、そういうことが書いてあった)。

 阿蘇山の草千里が上空からはしゃれこうべのように見えてしまって、かなり不気味である。桜島が246画像で真っ赤で、それまで観てきた火山との比較からも危険性が感じられた。伊豆東部の大室山が非常にきれいな円錐形をしていて、熱や植生からも周囲から際だっていることが印象的だった。
 解説から温泉や地熱発電など、火山と人の関わりが分かる情報も得られて、地方のランドマークでもある火山への理解が深まった。

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最新地球観測衛星「だいち」の目
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リモートセンシング読本〜インターネットの情報満載 岩男弘毅

衛星画像で読み解く 噴火しそうな日本の火山
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カテゴリ:地学 | 19:31 | comments(0) | trackbacks(0)

2016年M7.3熊本地震〜地表地震断層と阿蘇火山におけるビジュアル記録 林愛明

 熊本地震発生直後に撮影された地表地震断層の写真集。トレンチや建物の倒壊についての記録写真も載っている。撮影された地表地震断層はまたたくまに埋め立てられたらしく、一部は記録のために残すルールが必要だと思った。
 まぁ、道路は救援のためにも急いで復旧せざるを得ず、田畑などの私有地は現状では改変を止められないのだろう。

 熊本の火山は定期的な野焼きを受けているらしく、草地なので亀裂が非常に分かりやすかった。ただし、市街地みたいに横ずれを確認する目印には不足している。溝や登山道が使われていたけれど、道路のラインに比べると精度は落ちそうだ。
 モールトラックと呼ばれる圧縮構造でコンクリートが合掌状態になった写真も多く載っていて印象的だった。アスファルトは相対的に柔らかいからコンクリートがああなるのか。
 地震の圧倒的なエネルギーを感じるが、そもそも地上の構造物を動かしているのはおまけであり、大地を動かすエネルギーが主力なのである。
 あらためて地震の恐ろしさを実感した。

 トレンチについては写真とスケッチだけで説明文がなく――年代測定もない――専門家以外には意味がわからないと思われる。とりあえず断層の中に地表まで到達していないものがあることに注目である。
 調査に土地を提供した方は、地震に一矢報いる気持ちだったのかな。

2016年 M7.3 熊本地震
2016年 M7.3 熊本地震
アイスランドのギャオの写真っぽいものがいくつかあった。
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