地層の調べ方 藤本広治 グリーンブックス62

 岩石の見方からはじまる地質調査の実際を紹介する本。プレートテクトニクスの考えが日本に広がる前の出版でも、フィールドのことに限定して書かれているので、ふつうに使える内容になっている。
 そもそも大規模な地質活動については、ほとんど言及していなかった。

 クリノメーターが水中でも使えることには、水中に現れた地層の走向傾斜をはかる意味があったんだ。走向板への言及がなかったことが気になる。
 根性で層理面を掘ったことが分かる写真が載っていてニヤニヤした。

 この時代の写真は一枚一枚丁寧に撮られた写真だろうな。
 著者の経歴に小学校教諭としか書かれていなくて驚いた。むしろ卒業した大学と学部を知りたいんだが……。

関連書評
増補版 地層の見方がわかるフィールド図鑑 青木正博・目代邦康
地質調査入門 柴正博 東海大学出版部

地層の調べ方 (グリーンブックス 62)
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元素でわかる鉱物のすべて 八川シズエ

 元素ごとに鉱石となる鉱物や存在量の多い鉱物をならべた鉱物図鑑。しかし解説文は元素についてのものが充実していて、鉱物の説明は簡潔である。また鉱物の産地表記が存在しない。

 元素については発見の常連となっている科学者のグループがいくつか存在することがよくわかった。顔なじみの感覚が芽生えてくる。産地ではやっぱりイッテルビーが圧倒的である。
 用途について最新のものや人体との関わりについて、詳しく説明している傾向がみられた。トリウムを造影剤に使っていた過去に恐怖した。悪性腫瘍の原因になるって当たり前だろ……。ちょっと前の時代が放射性物質にたいして、いい加減だったりする。

 関連鉱物の表示されない元素も結構あって、文章がずっと続くので読み進めるのに難儀した。ランタノイド砂漠(ランタン自体には鉱物写真がついているが)を突破して、やっとたどり着いたタングステンのありがたさ。
 そういう経験も元素を覚えるのに関連づければ役立つかもしれない。

関連書評
こども鉱物図鑑 八川シズエ

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元素でわかる鉱物のすべて
元素でわかる鉱物のすべて
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絵でわかるカンブリア爆発 更科功

 思ったより堅い!
 絵で解説していることは事実ながら、文章は専門的で意外と込み入った話が多かった。おかげで勉強になることも多かったが、さっくりとは読めなかった。
 カンブリア爆発の動物について図鑑的なものを期待すると、思惑が外れるかもしれない。いちおうエディアカラ動物とあわせて図鑑になっている部分もあって、それはそれで楽しめた。

 完全に途絶えた系統であるステムグループの考え方は初めて知った。現生動物から辿れるクラウングループよりも可能性が広がった世界であるが、それゆえに正確にイメージすることは難しい。
 あと、デトリタスの言葉も意味を知ったのは初めてだ。カンブリア紀になって深い穴を掘れる生物が誕生したことは、少し遅れてやってきたカンブリア爆発につながっている気がする。
 地面に穴をあける道具が、捕食に応用できたはずだから。

関連書評
エディアカラ紀・カンブリア紀の生物 土屋健
「知」のビジュアル百科 太古の生物図鑑 ウイリアム・リンゼー
図説カンブリアンモンスター図鑑 千崎達也・左巻健雄

絵でわかるカンブリア爆発 (KS絵でわかるシリーズ)
絵でわかるカンブリア爆発 (KS絵でわかるシリーズ)
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「知」のビジュアル百科 太古の生物図鑑 ウイリアム・リンゼー

 日本語版監修 伊藤恵夫。
 63ページで46億年。もっとも10億年ほどは生物がいなかったと説明しているので、1億年に2ページていどは使えている計算になるビジュアル図鑑。
 先カンブリア時代はそんなに情報がないけれど――そうすると1億年が10ページ程度にはなってくる。
 相対的に詳細に思える。でも、やっぱり早送りなのは否めない。

 非常に貴重な第一級の標本がおしげもなく紹介されている様子で、その質の全体的な高さには感銘を受けた。
 復元はリアルすぎるせいでイメージが固定されてしまう危険もある。とりあえずハルキゲニアの前後が逆の時代の出版物である。
 ある意味、ハルキゲニアは図鑑の年代をはかる「示準復元図」になっているな。
 また哺乳類は爬虫類から分かれて生まれた形で説明し、鳥類は恐竜に近縁とは言っても子孫とまでは言っていない。

 あとプテラノドンの飛行速度が50km毎時、ヒッパリオンの走行速度が15km毎時と根拠はあげずに紹介していた。
 ゾウとウマが進化を語る上の好例として紹介されている点が興味深かった。もうちょっと土地(大陸)と進化の関係を掘り下げられていれば、もっと良かったなぁ。

太古の生物図鑑 (「知」のビジュアル百科)
太古の生物図鑑 (「知」のビジュアル百科)
カテゴリ:地学 | 23:21 | comments(0) | trackbacks(0)

おもしろサイエンス〜宝石の科学 宝石と生活研究会

 宝石について簡単に知識を得られる本。
 とても読み進めやすく新しい知識もあった。モース硬度には15段階の新モース硬度なんてものが提唱されていたんだ。
 ダイアモンドとコランダムの間にある大きな空間に炭化硼素と炭化珪素が置かれていたが、中間的な硬度を持つ物質って存在するのかな?下の方は割とモース硬度と変わっていないが、水晶が8で溶融石英が7にされている点が気になる。
 あまり細かくすると硬度の異方性が問題になってきそう。

 やはりダイアモンドが宝石の王様あつかいされていて、この宝石については有名な単体についての解説が3ページにわたって行われていた。
 ある時期の取引価格がでているダイアモンドもあって興味深い。
 他の宝石についても同様の細かさがあれば、さらに嬉しかったなぁ。
 日本人がブラックオパール好きなのは知っていたが、キャッツアイもほとんどが日本に来ているらしい。熾烈な国際争奪戦に晒されるよりは、その方が価格が安定する?

 宝石全体としては、やはり減少傾向にあるみたいで、この流れが変わることは難しいと思われる。月や小惑星から採掘できるようになれば……とても待っていられないし輸送コストが怖い。
 だからといって焦ることなく気に入ったものを、ひとつひとつ大事に購入するように心がけたいものだ。

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おもしろサイエンス 宝石の科学 (B&Tブックス)
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図説 鉱物の博物学――地球をつくる鉱物たち――

 松原聰・宮脇律郎・門馬綱一 著。
 鉱物図鑑と鉱物学の入門書がまとめられた本。前半は黒をバックに鉱物写真が大きく載せられている。必要なデータは視認性よくまとめられていて、説明文は非常に簡潔である。
 標本のグレードは基本的に高いが、あえて国産のものを載せている関係で綺麗ではない標本が載っている場合もある。外国産の標本は産出国までしか書かれておらず、鉱山名などは不明な点が残念だった。だいたい「いつもの産地」と考えておけばよさそうだけど。
 毒性や磁性をもつ鉱物は名前の横にそれを表す記号が描かれている。なんで蛍光性の記号はないの……。

 かんらん石をオリーブ石と表記していて何事かと思ったら、かんらんはオリーブとは別の植物だから適当ではないと言うこだわりがあるそうだ。
 言い方を増やしたくないのでオリーブ石とするならオリビンとカタカナ表記してほしいなぁ。

 鉱物標本で興味をかき立てたあとに鉱物学の話がはじまるのだが、知らないところや専門的なところも押さえていて、なかなか良かった。
 コラムでは著者(三人の内の誰なのかは不明)が経験した研究に関わるマニアックな話を読むこともできた。
 後半にはレアメタル図鑑も収録されていて、めずらしい金属リチウムの写真などを観ることができた。

関連書評
新鉱物発見物語 松原聰

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図説 鉱物の博物学
図説 鉱物の博物学
カテゴリ:地学 | 00:21 | comments(0) | trackbacks(0)

3D地形図で歩く日本の活断層 柴山元彦

 北は北海道から南は鹿児島まで、34個の活断層を3D地形図やその他の豊富な図で紹介してくれる本。
 沖縄がないのは地面にまで表れている活断層がほとんどないためか(たしか屋久島にちょっとあったが)。北海道もひとつしか活断層が紹介されていなかったりして、偏りが大きい。

 現在の地図に重ね合わせて3D地形が表示されている関係で、活断層の近くに、たくさんの主要な道路や鉄道が走っていることが良く分かった。
 地震で交通が途絶した場合に支援が余計に困難になると思ったけれど、どこかで断層を横切るよりは平行して走る方がマシかもしれない。
 断層の直上にあって、基礎を分割することで地震対策をしている新神戸駅にはどんな顔をしていいのか分からない……。

 3D地形図で歩き回った所感では次は四国での直下型地震が大きな被害をもたらしそうだと感じた。その前にプレート感地震が四国を揺さぶれば、そうでもなくなると思うけど、それはそれで幸せとはいえない。

 温泉と断層の関係に注目した記述が多くて、中でも赤石断層沿いにある鹿塩温泉が興味深かった。山中なのに海水と同じ塩分濃度の温泉がわき出すというのだから、塩止めされる戦国大名にはありがたい。
 プレートと一緒に地下に引き込まれた海水が断層沿いにあがってきている説には、大地に流れる悠久の時間を感じた。

関連書評
日本の活断層地図 中部・近畿・中国・四国・九州 活断層地図
第16回企画展 阿寺断層―活断層のわかったこと・わからないこと 中津川市鉱物博物館

3D地形図で歩く日本の活断層
3D地形図で歩く日本の活断層
カテゴリ:地学 | 20:15 | comments(0) | trackbacks(0)

古第三紀・新第三紀・第四紀の生物・下 土屋健

 古生物の黒い本最終巻。あとがきで2年8ヶ月で10巻が刊行されたことが書かれていて、そのペースの早さに驚いた。
 「最新」の研究成果で内容が一通り揃っている価値は高いので非常にありがたい。まったくもって、よくぞ書き抜いたものだ。

 最終巻はさすがに哺乳類の話題が多くて、中でもオーストラリア大陸の有袋類が多く紹介されていた。1936年に滅んだタスマニアタイガーは非常にもったいない。
 日本人並に生物資源の管理が杜撰なオーストラリア人に任せておけば今後も絶滅動物が発生しかねない。

 南アメリカ大陸の古生物もたくさん載っていて、中でもクリプトドンのように北アメリカ大陸に「逆侵攻」をしかけた珍しい生物に魅力を感じた。
 巨大ナマケモノのメガテリウムは生きている姿をみたい動物の上位に入る。動くスピードを含めて。

 最後を飾ったのは霊長類のヒトだったが、他の古生物と違って、復元図が載っていないことが印象的だった。道具などをもたせることで「特別」な感じを出さないためかな。
 ここまで連続して時間の流れに乗ってきたことで、人類の進化していく「先」、そして他の生物が進化していく「先」を考えさせてくれた。とりあえずブルドッグは滅びる。

古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 下巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))
古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 下巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))
カテゴリ:地学 | 22:04 | comments(0) | trackbacks(0)

古第三紀・新第三紀・第四紀の生物・上 土屋健

 群馬県立自然史博物館監修。
 ちょっとまとめすぎ?新生代のあつかいに疑問を覚えてしまうが、シリーズが終わってほしくないだけでもある。新第三紀・第四紀が短すぎて分類上も生物の進化を連続的に語るのに問題があるらしい。
 せめて中巻がほしかったところだ。

 とりあえず上巻はまず人と縁のふかい犬・猫・馬、そして象を三つの紀を通しておい、その他の生き物の進化をみていく。
 馬が北米で発展したことは知っていたが、それ以前はインド大陸にいて、インドの衝突とともに世界にひろがった情報は初耳だった。長い足で世界中を駆けめぐっているなぁ。
 いまの大陸配置はオーストラリアと南極以外にはわたるチャンスがそれなりにあるので超大陸にちかい面もありそう。

 現代ではすでに滅びてしまった肉歯類などのグループにもワクワクした。もしかしたら彼らがいま地上を闊歩していた可能性もあったのかもしれない。
 すでに失われた多様性が存在するとも言える。虐殺者の言い訳に使わせないようにしないと。

 植物への言及が少ないのだが、草を食べることに適応した馬が広がったりしているので無視できない要素だ。とっつきやすい動物を紹介してくれるので、それ以上は参考文献を読んでほしいってことかな。
 まずは下巻を読もう。

関連書評
白亜紀の生物・下巻 土屋健 群馬県立自然史博物館監修

古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 上巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))
古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 上巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))
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緊急出版 平成28年熊本地震 発生から2週間の記録

 熊本日々新聞社による報道写真をまとめた一冊。非常に大きな判で熊本地震の被害状況が収録されている。
 熊本城を筆頭とする文化財の被害については、被害を受ける前の写真も後半のページに収録されているので、被害の凄まじさを見比べることで実感できる。
 阿蘇神社の門がつぶれている様子は、熊本城ほど報道されていなかったので衝撃的だった。全体が崩壊したジェーンズ邸など惨憺たるありさまだが、人気があり象徴的な熊本城や宗教施設である阿蘇神社と違って、復興できるのか心配になった。

 熊本城については400年で最大の被害と説明する写真に、復興天守を使っていて、それは400年間存続したものではないだろうと突っ込んでしまった。
 それぞれの歴史的な存在期間を説明してくれていないのは、ちょっと不親切。石垣の内側に倒れるか、外側に倒れるかでも、修理のしやすさは段違いだと思われる。

 地表地震断層の写真がドローンを使って撮られていて、地震研究にドローンが果たせる役割が感じられた。
 直接的な人の被害については、新聞報道で使われる写真と言うこともあるのか、死者や怪我人の写真はほとんど収録されていないので印象が弱くなってしまう所があった。
 被写体の尊厳などを考えれば難しいのだろうな……。救助で忙しいはずの自衛隊が救助した人を布でカバーする手間をマスコミに強いられていることに複雑な気分になる。

平成28年熊本地震  特別報道写真集  -発生から2週間の記録-
平成28年熊本地震 特別報道写真集 -発生から2週間の記録-
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