絶滅したふしぎな巨大生物 川崎悟司

 各時代の巨大生物をカラーイラストで紹介する古生物図鑑。巨大生物にこだわることは偏りであるが、汎用性が低いがゆえに時代の特徴を写し出している面もある。
 たとえば高い酸素濃度によって昆虫でも巨大化できたり、低い酸素濃度によって気嚢システムをもつ恐竜が有利になったりする。

 ティラノサウルスは二回にわけて紹介されていて、ライバルのトリケラトプスはトロサウルスを加えてアクロバット的に二回。その二種類がトップかと思いきや、マンモスが三回分も情報を与えられている。
 ただし、マンモスの中にはさらに細かい分類があるので、ちょっとずるい。

 体重700kgの巨大ネズミ「フォベロミス・パッテルソニ」や巨大ナマケモノ「メガテリウム」、サーベルタイガーによく似た有袋類「ティラコスミルス」など北米大陸と繋がる前の南米大陸にはおもしろい哺乳類がたくさんいたことが分かる。
 自然な現象とはいえ、ニッチ争いによって大量の絶滅動物が出たことが残念に思えてしまった。

オールカラー完全復元 絶滅したふしぎな巨大生物
オールカラー完全復元 絶滅したふしぎな巨大生物
カテゴリ:地学 | 20:09 | comments(0) | trackbacks(0)

衛星画像で読み解く 噴火しそうな日本の火山 福田重雄

 気象庁に24時間監視されている活火山とそこまではされていないが活動的な一部の火山のランドサット衛星解析画像を解説付きで載せた本。
 ロシアに実行支配された国後島の爺爺岳がみられるのも、衛星画像であるおかげか。下手に開発するよりも、あのまま残しておきたい気持ちになった。
 ランドサットの撮影対象の関係があって、小笠原諸島の火山は収録できていない点が、すこし残念だった。それでも火山島の写真はそれなりに載っていて――元島の桜島も――ひとつの完結した世界が手に取るように観察できる点は楽しかった。

 基本的に画像はトゥルーカラー1枚とフォールスカラー3枚で同じ領域を紹介している。
 フォールスカラーは植生がわかりやすいバンド234の合成画像と、地熱活動のわかりやすいバンド246の合成画像、そして溶岩のわかりやすいバンド457の合成画像が利用されている。
 最初から最後まで読んでいれば、多少なりとも見方が身についてくる。246の合成画像を駆使すれば天然温泉を探すことも可能(おそらく同じ著者の本で、そういうことが書いてあった)。

 阿蘇山の草千里が上空からはしゃれこうべのように見えてしまって、かなり不気味である。桜島が246画像で真っ赤で、それまで観てきた火山との比較からも危険性が感じられた。伊豆東部の大室山が非常にきれいな円錐形をしていて、熱や植生からも周囲から際だっていることが印象的だった。
 解説から温泉や地熱発電など、火山と人の関わりが分かる情報も得られて、地方のランドマークでもある火山への理解が深まった。

関連書評
最新地球観測衛星「だいち」の目
気象衛星画像の見方と使い方
リモートセンシング読本〜インターネットの情報満載 岩男弘毅

衛星画像で読み解く 噴火しそうな日本の火山
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2016年M7.3熊本地震〜地表地震断層と阿蘇火山におけるビジュアル記録 林愛明

 熊本地震発生直後に撮影された地表地震断層の写真集。トレンチや建物の倒壊についての記録写真も載っている。撮影された地表地震断層はまたたくまに埋め立てられたらしく、一部は記録のために残すルールが必要だと思った。
 まぁ、道路は救援のためにも急いで復旧せざるを得ず、田畑などの私有地は現状では改変を止められないのだろう。

 熊本の火山は定期的な野焼きを受けているらしく、草地なので亀裂が非常に分かりやすかった。ただし、市街地みたいに横ずれを確認する目印には不足している。溝や登山道が使われていたけれど、道路のラインに比べると精度は落ちそうだ。
 モールトラックと呼ばれる圧縮構造でコンクリートが合掌状態になった写真も多く載っていて印象的だった。アスファルトは相対的に柔らかいからコンクリートがああなるのか。
 地震の圧倒的なエネルギーを感じるが、そもそも地上の構造物を動かしているのはおまけであり、大地を動かすエネルギーが主力なのである。
 あらためて地震の恐ろしさを実感した。

 トレンチについては写真とスケッチだけで説明文がなく――年代測定もない――専門家以外には意味がわからないと思われる。とりあえず断層の中に地表まで到達していないものがあることに注目である。
 調査に土地を提供した方は、地震に一矢報いる気持ちだったのかな。

2016年 M7.3 熊本地震
2016年 M7.3 熊本地震
アイスランドのギャオの写真っぽいものがいくつかあった。
カテゴリ:地学 | 21:57 | comments(0) | trackbacks(0)

楽しい動物化石 土屋健・芝原暁彦 協力

 先カンブリア時代から現代まで、世界中の立派な動物化石が写真で楽しめる。
 古生物への取っかかりに向いた本。コラムもそこそこ充実していて、ティラノサウルスとアノマロカリスの対話形式で、地学の勉強ができる謎のコーナーも存在した。姉妹本の「楽しい植物化石」と同じである。

 アノマロカリスの子孫がデボン紀まで存続していたこと、マルレラの子孫もオルドビス紀までいたことなどで少しイメージが変わって面白かった。
 表紙にもなっている目が大きく飛び出した三葉虫アサフス・コワレウスキーの強烈な姿も記憶に残る。復元図じゃなくて職人芸でクリーニングされた化石であることが凄い。そして、コワレウスキーだけに化石の目が壊れそう。
 防御姿勢でも腹を隠して目は飛び出したまま。もしかしたら目は再生できたのかなぁ。

 やはりというか三畳紀の化石が少ないところは寂しかった。
 著者の化石のクリーニング技術や標本番号に注目する視線はマニアックで新鮮だった。

関連書評
楽しい植物化石 土屋香・土屋健:姉妹本

楽しい動物化石
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カテゴリ:地学 | 00:07 | comments(0) | trackbacks(0)

探検!日本の鉱物 寺島靖夫

 鉱物採集歴60年。神岡鉱山につとめたこともある著者が長年をかけて採集した日本の鉱物を写真で紹介する鉱物コレクションの入門書。
 いまでは跡形もない産地も多い一方で、最近採集したとの情報が載せられている場合もあって、心強い。譲ってもらった標本もそれなりにあったが、もらった相手に大学教授がたくさんいて著者の交友関係の広さがうかがえる。まぁ、標本を静岡県の奇石博物館などに提供しているくらいなので。

 個別の標本をみていくと、兵庫県中瀬鉱山の自然金は結晶までみえる非常に立派なもので閉山時の標本販売を察知した著者のめざとさに感心する。輝安鉱がともなっているところもいい。
 岩手県崎浜のリチア電気石は濃いピンク色で透明感があり、国産のイメージを吹き飛ばす美しさだった。表紙にも出てきている。
 神岡鉱山産の硫酸鉛鉱はシャープで美しい。閃亜鉛鉱上にあるので黒と白(無色透明)のコントラストも鮮やかだった。
 宮城県本砂金産の菫青石も結晶がよく表れていて迫力があった。風化した桜石と同じものとは思えないほど。
 有名な雨塚山にならぶ紫水晶産地として鳥取県藤屋があげられていた(その標本写真はなかった)が、その名前を知らなかったので興味を引きつけられた。

 最後にアメリカとカナダでの鉱物採集情報も少し載っている。日本にも同じように採集できる産地が増えるといいなぁ。とりあえず甲武信鉱山はあるが。

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探検! 日本の鉱物
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カテゴリ:地学 | 17:35 | comments(0) | trackbacks(0)

奇妙で美しい石の世界 山田英春

 今度は文庫版。模様のある石を収集している著者による4冊目になる石の本。石英系が中心といいながらも、スタートは石灰岩のパエジナ・ストーンで、ヴァリサイトで締めそうになった後に、コロンビア産の瑪瑙で終わった。写真はエメラルドが最後か……。
 個人的にはカラフルなパタゴニア産のアゲートが気に入った。スコットランド各地の瑪瑙も魅力的だが、まず入手できそうにない。

 南北新大陸が産地として有望らしく、そちら方面の写真や逸話が多かった。
 モリソナイト(モルガナイトと紛らわしい)の発見者ジェイムズ・モリソン氏の情報収集が妙に熱心で、著者の石に関わった人物への関心が深くなっていったことを感じさせる。

 オレゴン州の伝説的ロックハウント、シャート・クワント一族の話やコロンビアで知り合った女性の人生も興味深かった。
 こうやってエピソードが石に彩りを与えてくるところは、名物茶器に近い側面があるのかもしれない。

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奇妙で美しい 石の世界 (ちくま新書 1263)
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カテゴリ:地学 | 23:06 | comments(0) | trackbacks(0)

岩石薄片図鑑〜精細写真で読み解く鉱物組成と生い立ち 青木正博

 岩石薄片写真といえば、学術よりのイメージがあったのだけど、本書では観賞用としても十分に通用する岩石薄片写真が大量に納められている。
 直交ニコルによって無色の鉱物も色鮮やかになる場合があるので、意外と鑑賞向きな部分も持っていることが分かった。

 しかし、それも薄片製作者の優れた技術があればこそで、初心者が薄片作成に挑戦しても、なかなか思うようにはいかない。その試行錯誤も楽しみの一つではあるのだろうけど、本書では超絶技巧や新技術によって生まれた薄片の姿と、そこから読みとることのできる豊かな地学的情報を楽しみたい。
 本書では均一な厚みで薄片を作ることによって大きな写真の視野全体が写っているのだが、現代の技術では焦点をずらしながら連続的に撮影して得た画像を合成することで全体の焦点があった画像をつくる技術も存在する。
 次善の策として、そちらが使えないかも気になるところ(ただし、干渉色は厚みに依存するので鉱物同程うえでは都合が悪い)。

 個別の写真では「かんらん岩」がやっぱり直交ニコルで非常に鮮やかなでゴージャスだった。灰鉄輝石スカルンも負けていない。その隙間を埋める方解石のクロス模様の写真は幻想的ですらある。
 フズリナや貨幣石の薄片も生物の構造がわかって面白い。熱水沈殿物に取り込まれた生物の写真まであって最新技術には驚かされた。
 自分が持っている岩石も薄片にしたら豊かな世界が広がると想像すれば、宝の山に思えてくる。

関連書評
岩石薄片の作り方 力田正一 グリーンブックス106

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岩石薄片図鑑: 精細写真で読み解く鉱物組成と生い立ち
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カテゴリ:地学 | 21:59 | comments(0) | trackbacks(0)

古世界の住人 川崎悟司

 ウェブサイト「古世界の住人」の出版物版。それぞれの古生物が自己紹介を繰り広げる。有名どころではなく珍妙さに注目したチョイスになっている。
 それが突き抜けてフィクションの生物もたくさん収録されている。マイコーキスティスのブラックからホワイトになるって説明はブラックな毒が強すぎた。出版当時はまだ亡くなっていなかったっけ?

 フィクションの生物は元ネタがわかるからフィクションだと認識できるけれど、実在の古生物もフィクションに負けないくらい奇妙な姿や生態を持つものがたくさんいた。
 生物の多様性と、進化の可能性をより強く感じる演出になっている。

 ただし、説明されている生態は説のひとつみたいなもので、本当にそうしていたかは怪しいものもあるので注意が必要だろう。まぁ、究極的には確かなことはわからない部分も残るのだろうし、割り切って楽しみたいものだ。

関連書評
海・川・湖の奇想天外な生きもの図鑑 川崎悟司・武田正倫
日本の白亜紀・恐竜図鑑 宇都宮聡+川崎悟司
絶滅した奇妙な動物 川崎悟司

古世界の住人
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カテゴリ:地学 | 21:49 | comments(0) | trackbacks(0)

南海トラフ地震・大規模災害に備える 田結庄良昭

 副題は「熊本地震、兵庫県南部地震、豪雨災害から学ぶ」。近年おこった災害の情報を参考にして、主に兵庫県における次なる災害に備えることを考えた本。
 著者が神戸大学の名誉教授だったので、そんな形になっているが、日本全体について言えることも多い。
 たとえば、まさ土の多い地質は、兵庫県だけではなく瀬戸内海一帯や滋賀県南部、岐阜県から北関東などにも広がっている。

 液状化現象を経験した地盤は強固になるものと思いこんでいたのに、さらに軟弱になった例があげられていた。直観に頼らずに、ちゃんと実例を調べることが大切だと痛感した。
 何か言わざるをえない時は、一般論に頼ってしまうこともありそうだけど、最大限気を付けたい。

 地震災害からは少しはずれた土砂災害の関する話では、堤防の上を水が乗り越えて裏側から根本を掘って崩していく現象の話が興味深かった。
 掘られる部分のコンクリートを使った補強が有効らしい。
 一方で地震動に対してはコンクリートよりも土砂でできたものの方が耐久性が良かったことも本書は取り上げていたりして、自然はさすがに一筋縄ではいかない。

 植林地の荒廃によって流木が増え、川の流れがせき止められることでの災害の危険性があがっているという情報にはため息しか出なかった。
 でも、自然林なら、こういう流木は減るのかな?
 とりあえず、まともに手入れされていない過密な杉林は落ち葉も堆積せず、根本が流水で削られるなど条件が悪いことは想像できる。

関連書評
緊急出版 平成28年熊本地震 発生から2週間の記録
岩波科学ライブラリー204〜連鎖する大地震 遠田晋次

南海トラフ地震・大規模災害に備える 熊本地震、兵庫県南部地震、豪雨災害から学ぶ
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カテゴリ:地学 | 16:03 | comments(0) | trackbacks(0)

深読み!絵本「せいめいのれきし」 真鍋真

 岩波科学ライブラリーの260。
 アメリカの絵本作家バージニア・リー・バートン女史が、自然史博物館に通いながら描き上げた絵本「せいめいのれきし」について、恐竜に詳しい著者が最新の知識をまじえて解説する。

 このような絵本があることを初めて知った。現在の科学者には小さい頃に「せいめいのれきし」を読んで大きな感銘を受けた人がいるらしい。
 そう聞くと自分も読んでいれば人生が変わったかもしれないと想像してしまう。まぁ、いまでもこうして地学関係のことに関心を持ち続けていられるだけで良しとするべきか。
 舞台の袖で、地質学者たちが解説をおこない、幕のなかで「せいめいのれきし」が展開される画面構成は非常におもしろい。何か影響を受けたゲームもあって良さそうな手法である。

 著者はさすがに地学に詳しくて、最初に上陸したのは「両生類」じゃなくて「四肢動物」とされることや、現在では「ほ乳類型は虫類」の分類が使われていない(そのまま単弓類と呼ぶ)ことから、いまや完新世後の人新世(アントロポシーン)が始まっていると唱えられていることまで新しい知見を与えてくれた。
 気になったのは最後に出てきた、現在進行中の「第六の絶滅」では身体の大きいものの絶滅率が高いことが他の絶滅とは違うという話で、恐竜が絶滅した理由は身体が大きかったからという白亜紀末にあった説明に相反するように感じた。
 白亜紀末も大きいものの絶滅率が高いわけではないのか?そんな疑問を解くのも次世代の地質学者たちの仕事なのかもしれない。

関連書評
時を刻む湖〜7万枚の地層に挑んだ科学者たち 中川毅
決定版恐竜大図鑑1 NHKエンタープライズ

深読み! 絵本『せいめいのれきし』 (岩波科学ライブラリー)
深読み! 絵本『せいめいのれきし』 (岩波科学ライブラリー)
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