岩石薄片図鑑〜精細写真で読み解く鉱物組成と生い立ち 青木正博

 岩石薄片写真といえば、学術よりのイメージがあったのだけど、本書では観賞用としても十分に通用する岩石薄片写真が大量に納められている。
 直交ニコルによって無色の鉱物も色鮮やかになる場合があるので、意外と鑑賞向きな部分も持っていることが分かった。

 しかし、それも薄片製作者の優れた技術があればこそで、初心者が薄片作成に挑戦しても、なかなか思うようにはいかない。その試行錯誤も楽しみの一つではあるのだろうけど、本書では超絶技巧や新技術によって生まれた薄片の姿と、そこから読みとることのできる豊かな地学的情報を楽しみたい。
 本書では均一な厚みで薄片を作ることによって大きな写真の視野全体が写っているのだが、現代の技術では焦点をずらしながら連続的に撮影して得た画像を合成することで全体の焦点があった画像をつくる技術も存在する。
 次善の策として、そちらが使えないかも気になるところ(ただし、干渉色は厚みに依存するので鉱物同程うえでは都合が悪い)。

 個別の写真では「かんらん岩」がやっぱり直交ニコルで非常に鮮やかなでゴージャスだった。灰鉄輝石スカルンも負けていない。その隙間を埋める方解石のクロス模様の写真は幻想的ですらある。
 フズリナや貨幣石の薄片も生物の構造がわかって面白い。熱水沈殿物に取り込まれた生物の写真まであって最新技術には驚かされた。
 自分が持っている岩石も薄片にしたら豊かな世界が広がると想像すれば、宝の山に思えてくる。

関連書評
岩石薄片の作り方 力田正一 グリーンブックス106

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古世界の住人 川崎悟司

 ウェブサイト「古世界の住人」の出版物版。それぞれの古生物が自己紹介を繰り広げる。有名どころではなく珍妙さに注目したチョイスになっている。
 それが突き抜けてフィクションの生物もたくさん収録されている。マイコーキスティスのブラックからホワイトになるって説明はブラックな毒が強すぎた。出版当時はまだ亡くなっていなかったっけ?

 フィクションの生物は元ネタがわかるからフィクションだと認識できるけれど、実在の古生物もフィクションに負けないくらい奇妙な姿や生態を持つものがたくさんいた。
 生物の多様性と、進化の可能性をより強く感じる演出になっている。

 ただし、説明されている生態は説のひとつみたいなもので、本当にそうしていたかは怪しいものもあるので注意が必要だろう。まぁ、究極的には確かなことはわからない部分も残るのだろうし、割り切って楽しみたいものだ。

関連書評
海・川・湖の奇想天外な生きもの図鑑 川崎悟司・武田正倫
日本の白亜紀・恐竜図鑑 宇都宮聡+川崎悟司
絶滅した奇妙な動物 川崎悟司

古世界の住人
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カテゴリ:地学 | 21:49 | comments(0) | trackbacks(0)

南海トラフ地震・大規模災害に備える 田結庄良昭

 副題は「熊本地震、兵庫県南部地震、豪雨災害から学ぶ」。近年おこった災害の情報を参考にして、主に兵庫県における次なる災害に備えることを考えた本。
 著者が神戸大学の名誉教授だったので、そんな形になっているが、日本全体について言えることも多い。
 たとえば、まさ土の多い地質は、兵庫県だけではなく瀬戸内海一帯や滋賀県南部、岐阜県から北関東などにも広がっている。

 液状化現象を経験した地盤は強固になるものと思いこんでいたのに、さらに軟弱になった例があげられていた。直観に頼らずに、ちゃんと実例を調べることが大切だと痛感した。
 何か言わざるをえない時は、一般論に頼ってしまうこともありそうだけど、最大限気を付けたい。

 地震災害からは少しはずれた土砂災害の関する話では、堤防の上を水が乗り越えて裏側から根本を掘って崩していく現象の話が興味深かった。
 掘られる部分のコンクリートを使った補強が有効らしい。
 一方で地震動に対してはコンクリートよりも土砂でできたものの方が耐久性が良かったことも本書は取り上げていたりして、自然はさすがに一筋縄ではいかない。

 植林地の荒廃によって流木が増え、川の流れがせき止められることでの災害の危険性があがっているという情報にはため息しか出なかった。
 でも、自然林なら、こういう流木は減るのかな?
 とりあえず、まともに手入れされていない過密な杉林は落ち葉も堆積せず、根本が流水で削られるなど条件が悪いことは想像できる。

関連書評
緊急出版 平成28年熊本地震 発生から2週間の記録
岩波科学ライブラリー204〜連鎖する大地震 遠田晋次

南海トラフ地震・大規模災害に備える 熊本地震、兵庫県南部地震、豪雨災害から学ぶ
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深読み!絵本「せいめいのれきし」 真鍋真

 岩波科学ライブラリーの260。
 アメリカの絵本作家バージニア・リー・バートン女史が、自然史博物館に通いながら描き上げた絵本「せいめいのれきし」について、恐竜に詳しい著者が最新の知識をまじえて解説する。

 このような絵本があることを初めて知った。現在の科学者には小さい頃に「せいめいのれきし」を読んで大きな感銘を受けた人がいるらしい。
 そう聞くと自分も読んでいれば人生が変わったかもしれないと想像してしまう。まぁ、いまでもこうして地学関係のことに関心を持ち続けていられるだけで良しとするべきか。
 舞台の袖で、地質学者たちが解説をおこない、幕のなかで「せいめいのれきし」が展開される画面構成は非常におもしろい。何か影響を受けたゲームもあって良さそうな手法である。

 著者はさすがに地学に詳しくて、最初に上陸したのは「両生類」じゃなくて「四肢動物」とされることや、現在では「ほ乳類型は虫類」の分類が使われていない(そのまま単弓類と呼ぶ)ことから、いまや完新世後の人新世(アントロポシーン)が始まっていると唱えられていることまで新しい知見を与えてくれた。
 気になったのは最後に出てきた、現在進行中の「第六の絶滅」では身体の大きいものの絶滅率が高いことが他の絶滅とは違うという話で、恐竜が絶滅した理由は身体が大きかったからという白亜紀末にあった説明に相反するように感じた。
 白亜紀末も大きいものの絶滅率が高いわけではないのか?そんな疑問を解くのも次世代の地質学者たちの仕事なのかもしれない。

関連書評
時を刻む湖〜7万枚の地層に挑んだ科学者たち 中川毅
決定版恐竜大図鑑1 NHKエンタープライズ

深読み! 絵本『せいめいのれきし』 (岩波科学ライブラリー)
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上から読んでも下から読んでもな著者名
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美しいアンティーク鉱物画の本 山田英春

 19世紀末から20世紀初頭にかけて出版された欧米の本から、カラーの鉱物画を抜き出して収録した本。
 写真とは違った雰囲気の鉱物が楽しめる。スケッチと写真の中間を埋める感じになっていて、懐かしい感じもした。

 一部のイラストは番号だけがふられていて、最後の方で鉱物名と産地が記載される形になっている。そのため、ちょっとした鉱物当てクイズの感じが楽しめた。
 外れたら写真じゃなくて絵であることが原因にしておきたい。

 母岩付きダイアモンドは、どの絵でも存在感を発揮していて、見間違えのない感じだった。分離結晶になった場合でも、表面のシャープではない様子からスピネルなどと区別できる(無色であるし)。
 エメラルドを代表とするベリル関係は流石に愛されていて、母岩付きの美しいイラストが目白押しだった。トパーズも1ページに集められていると比較が興味深かった。

 鉱物画切手は発行している国や地域が誇りにしている鉱物がうかがえて、鉱物と文化の関わりからも興味深かった。モナコ公国の金紅石と緑泥石は現地で採れるものなのかな。小さな国なのに凄いなぁ。
 あと、ニュージーランドの軟玉切手が観られて満足〜。

関連書評
不思議で美しい石の図鑑 山田英春
インサイド・ザ・ストーン〜石に秘められた造形の世界 山田英春

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美しいアンティーク鉱物画の本
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Minerals in the Earth〜大地からの贈り物 神奈川県立生命の星・地球博物館

 神奈川県立生命の星・地球博物館でおこなわれた鉱物の特別展の解説書。鉱物の成因を軸にまとめていて、複数の成因で生まれる鉱物について一部は産地ごとの成因を知ることができた(熱水鉱床うまれの菱マンガン鉱など)。

 表紙にもなっている栃木県産のバラ輝石が圧巻の美しさで、本文中では表紙とは画像が回転した状態で紹介されているほど――回転していなければ何も感じないのに、安直な使い回しに感じる。

 神奈川県の博物館らしく、神奈川県産の鉱物が充実していた。たとえば湯河原沸石だが……これは静岡県産の方が写真が大きかったりする。
 玄倉の燐灰石がふつうの例みたいに出てくるのも神奈川県の博物館ならでは?

 海外の珍しい鉱物では六面体のダイアモンドやパキスタンアシュトン産の透明感のある緑色をした水晶が興味深かった。
 生命の星・地球博物館の鉱物コレクションの軸となっている寄贈されたコレクションについての紹介もあった。

関連書評
美しい鉱物と宝石の事典 キンバリー・ライト 著/松田和也 訳

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ビジュアル版 地球・生命の大進化〜46億年の物語 田近英一・監修

「大人のための図鑑」と銘打った地学の本。綺麗な図や写真、イラストなどで地球の誕生から現在までが紹介されており、未来についてもちょっと書かれている。
 2億5千万年後に誕生する超大陸「パンゲア・ウルティマ」に妄想が膨らんだ。でも、コラムで紹介されていた別の説で産まれる超大陸「アメイジア」の方を先に知っていたので、アメリカの東側に沈み込み帯が誕生する展開に不審なものを感じてしまった。
 そこまでして大西洋は広がりたくないのか?困った奴だ。
 パンゲア・ウルティマにおいてはインド洋が内海になっているところも興味深い。インド洋の生き物は特殊な進化を約束されている!?

 まぁ、すべては人類による大量絶滅を切り抜けてこそ。過去の大量絶滅を遙かに上回る速度で現在の絶滅が進行しているとも紹介されており、未来がとても心配になる。

 大人向けでも恐竜は関心が高いと思ったのか、再現イラストがたくさん紹介されていた。ただし、羽毛がない復元ばかりが並んでいるので、個人的には違和感が強かった。
 ビジュアルが強い図鑑だけに、復元の変化による影響も強く受ける。
 過去の大陸配置についても、それなりに詳しい図が載っているので興味深かった。

関連書評
「地球科学」入門 谷合稔
大地と海を激変させた地球史46億年の大事件ファイル ニュートンムック

大人のための図鑑 地球・生命の大進化 -46億年の物語-
大人のための図鑑 地球・生命の大進化 -46億年の物語-
カテゴリ:地学 | 19:51 | comments(0) | trackbacks(0)

楽しい植物化石 土屋香・土屋健

 なんとなく国産の個人的なコレクションの本だと勘違いしていた。中身を開いたら古生代からガッツリ世界的な標本が紹介される本だった。
 著者のひとりでもある土屋健氏の黒い本の植物版ダイジェストに感じられる内容だ。

 化石ショップを経営する土屋香氏の視点が入っていそうなコメントは、本屋のポップみたい。少々物欲を刺激する。
 しかし、白亜紀の植物については大半が現生のものが写真で紹介される形なのであった。第三紀以降では化石の方が多いのでイメージが混乱する。
 ディラノサウルスとアノマロカリスの地学会話が何気に情報量が多いもので、ほうほうと感心しながら読んだ。化石の形成が数ヶ月で済む場合もあるのか……。

 さいきんの第四紀ながら大量に紹介された栃木県塩原の化石も強く印象に残った。シノブ(植物)の化石と「忍石」の標本を並べてニヤニヤしたい。

関連書評
石炭紀・ペルム紀の生物 土屋健 群馬県立自然史博物館
白亜紀の生物・上巻 土屋健 群馬県自然史博物館監修
古第三紀・新第三紀・第四紀の生物・上 土屋健

楽しい植物化石
楽しい植物化石
カテゴリ:地学 | 22:44 | comments(0) | trackbacks(0)

ゾウがいた、ワニもいた琵琶湖のほとり 高橋啓一

 琵琶湖博物館ブックレット1
 360万年前の今の位置にはなかった琵琶湖。そこにはワニがいて、ゾウが水を飲むために近づいてくる所だった。
 大型動物の化石を中心に、琵琶湖周辺の生態系の変化とそれにまつわる研究を紹介する本。

 大量殺戮説が今では否定されていることを知った。すでに書いてしまった感想はしかたないけど、古い本を読むときは気をつけなくてはいけない。
 読んだ順番と学説の新しさは常に一致してくれないのだから余計に。

 その点、著者はミエゾウやアケボノゾウなどの名前が研究の進展によって変遷してきたことを説明してくれているが、混乱しないように注意するのは大変に違いない。資料をデジタル化して注釈に「現代の○○のことである」と説明が入るようになってくれると研究の助けになりそうだ。

 各地の標本を集めて比較研究をおこなった逸話も多くて、博物館の一般市民には見えにくい側の役割も、わかりやすく説明してくれていた。
「研究のために貸し出し中」と紙が置かれているときには世界のどこかでCTスキャンなどを受けているわけである。

関連書評
生命の湖 琵琶湖をさぐる 滋賀県立琵琶湖博物館
図説 日本の湖 森和紀・佐藤芳徳

ゾウがいたワニもいた琵琶湖のほとり (琵琶湖博物館ブックレット)
ゾウがいたワニもいた琵琶湖のほとり (琵琶湖博物館ブックレット)
カテゴリ:地学 | 19:11 | comments(0) | trackbacks(0)

鉱物レシピ〜結晶づくりと遊びかた さとうかよこ

 鉱物を楽しむために有用な情報がいっぱい載っている本。人工結晶は鉱物ではないのだけど、その作り方はやっぱり興味深い。それに人工結晶を作ることで鉱物への理解が深まる場合もありそうだ。
 タンバンの作成が法律の関係でできなくなっていることを知った。残念だが、他にもいろいろと結晶にできる物質は市場に出回っているようで、本屋で見かける結晶作成キットにも、もう少し注目してみようと思った。
 なんといっても天気管が気になる!天気と一緒に眺めたら毎日が楽しめそうだ。

 他にも鉱物を入れた万華鏡のつくりかたや、蛍石の加熱など簡単な実験の方法などが紹介されていて、内容はもりだくさんである。
 著者の経営するカフェに行ってみたくなったがニッチな商売がなりたつのはやっぱり東京なのであった……。

 文系と名乗っているけれど、記述の中には感心させられる自分にとっての新情報もあって興味深かった。
 しかし、モース硬度に.3や.8を出すのはいかがなものか。0.25や0.75といいたいことは想像できるけど、.5の基準鉱物が決まっていなければ、こんな表示はできない。あんな書き方をするならもっと説明をしてほしいと感じた。

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鉱物レシピ 結晶づくりと遊びかた
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カテゴリ:地学 | 15:05 | comments(0) | trackbacks(0)
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