全訳「武経七書」1 孫子・呉子 守屋洋・守屋淳

 武経七書としての孫子・呉子。まえがきで孫子とその他の間にある格差が紹介されている。特に司馬法と李衛公問対は数十年あたらしい本が出版されていなかったそうで……私もこのシリーズでしか読んだことがない。ただし、書き下し文だけならインターネットで読める。

 1巻はもっとも有名で人目に触れている孫呉の訳だが、それだけに訳の性質が読みとれた。
 最初に書かれている日本語訳は意訳の傾向が強い。すらすらと読めて理解しやすいが、頭を使って噛み砕く感じは弱くなる。そういう時は解説の後にある書き下し文を読めばいい。他の本との訳を比較するためにも書き下し文はあった方が助かるのだが、訳者は前書きで「書き下し文と漢文はなくてもいいけど、一部の好事家用につけた」と述べている……まぁ、自分が好事家であることは否定しない。
 自分もしょうじき漢文はまともに目を通していないが情報の圧縮されぶりをみるのは楽しい。
 孫子と呉子はそんなに文字数に大きな差はなかったと思うのだが、本書で占めているページ数は大きく違っている。孫子の方が熱心に解説され、翻訳もかんで含めるところがある。
 歴史的な扱いの差に切なくなると同時に、呉子が硬派でカッコいい気もしてくる。

 呉子は理想とする軍事と、本人が行わなければいけなかった軍事に差がある。戦いを避けるべきと自分が分析する要素をもつ相手(秦)と正面からぶつからざるをえなかったし、充実をもとめた政治へ口出しできる権限も完全ではない(魏の時代は特に)。
 そんな状況で結果を出したからクールだし、兵家でありながら陰謀に倒れても名誉を保てるのかもしれない。

 あと、料敵編の戦うべきではない敵の例は、戦争を防止する軍備を整えることを考えるうえでも役立つ気がした。ただし、「敵」がちゃんと諜報活動をしてくれる場合に限る……。

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[新装版]孫子・呉子 (全訳「武経七書」)
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おもしろふしぎ日本の伝統食材10〜海そう

 おくむらあやお・作。中村学・絵。萩原一・写真。
 日本人が昔から食べてきた海藻。世界でも最も海藻を食べる民族だと解説しているが、沖縄料理も載っており琉球民族と大和民族の比較はしていないっぽい。アイヌも結構食べたのではないかなぁ。
 日本の地理的な環境と自生する野菜の貧しさが海藻食を後押ししたらしい。
 それにしても、前処理に10時間煮るなどが必要な海藻まで食べる意欲には驚嘆させられる。

 料理はいろいろな海藻の料理を一品ずつ紹介する感じになっている。
 寒天とところてんの関係がはじめて分かった。寒天の名産地に、海のない長野県の茅野市があげられている事実。物流が発達した時代でなければ寒天は成り立たなかったということか。

 見た目のこともあって、むちゃくちゃ美味しそうと感じる料理は少なかったが、写真をみているだけで風味が口の中に浮かび上がる気がした。

おもしろふしぎ日本の伝統食材〈10〉海そう―おいしく食べる知恵
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おもしろふしぎ日本の伝統食材2〜さといも おくむらあやお

 中川学・絵。萩原一・写真。
 さつまいもやじゃがいもが日本に伝来する前から食べられてきたさといも。伝統食材の視点から言えば、「いも」と言えば「さといも」を指すはず。
 そんな作物の料理方法を紹介した絵本。

 いろいろ凝った料理を紹介したあと、あとがきで著者が好きな味として「衣かつぎ」を挙げている。
 ただゆでて剥いただけのさといもに塩をつけて食べる料理とも言えない料理を……ちょっとした空しさがある。

 素材に依存するが、さといものおいしさを楽しむには、もっとも向いた食べ方なのは間違いない。

 いもそのものではなく、ずいきの料理も紹介されていて、日本人とさといもの関係の深さを感じさせる内容になっていた。

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おもしろふしぎ日本の伝統食材〈2〉さといも―おいしく食べる知恵
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つくってあそぼう24〜こんにゃくの絵本 たかはたひろゆき・へん

 やまざきかつみ・え。
 中国から日本に伝わり、日本で最も食べられているコンニャク(海外ではミャンマーの一部などで伝統的に食べられているらしい)。よほど日本の風土や食文化にあっていたと思われるコンニャクの作り方が紹介されている。

 最初に生芋コンニャクがあって、こんにゃく粉が江戸時代に発明されてからは、もっと白いコンニャクが生まれてくる。だが、西日本では生芋コンニャクを模すために海草を入れて黒い粒々の入ったコンニャクにしていたりする。
 西日本は固めで、東日本は柔らかめが好きという話もあって、蝸牛論的な地域文化の話にもなっていた。

 現代はゴム手袋などがあって、かぶれる危険を減らしてコンニャクを作れるところがいい。
 これだけヘルシーな食べ物なのだからアメリカなどに国を挙げて売り込んでもいいんじゃないかと思った。

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こんにゃくの絵本 (つくってあそぼう)
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つくってあそぼう8〜ソーセージの絵本 やまぐちまお・え

 伊賀の里モクモク手づくりファーム・へん。
 表紙になっている謎の耳を持った生物の正体は最後まで明らかにならなかった。何もしらない子供が読んだら、ソーセージ発祥のドイツの人間は、この絵みたいな姿をしていると妄想するかもしれない。

 中国にも香腸と言われるソーセージがあり、韓国では隠し味にコーラを入れた!ソーセージなんてものもある。
 東アジアでも日本だけがソーセージの文化をもっていなかったわけで、肉食禁止はやっぱり不思議だ。そういえば肉食禁止を出したのは天皇なのに尊皇の明治政府はどうして肉食文化の流入を容認したんだ?
 いちいち欺瞞ばっかりなんだよなぁ。

 ソーセージづくりには低温で材料を混ぜることが欠かせず、一度でも温度が上昇すると味が落ちてしまう。
 ならば、氷が簡単に手に入らなかった時代のソーセージは、今より不味かったのではないか。中世ヨーロッパの人間にいまのソーセージを食べさせたらビックリしそうだなぁ。
 まぁ、できるだけ気温の低い時間に仕込むなどの手段は使われていそうではある。

 各種ソーセージの紹介写真がどれもおいしそうで、見ているだけでお腹が空いてしまった。今日はソーセージだな。

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ソーセージの絵本 (つくってあそぼう)
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そだててあそぼう75〜ブロッコリー・カリフラワーの絵本

 ふじめゆきひろ・へん。すぎたひろみ・え。
 元は同じだけど多彩に広がるアブラナ科ワールド!ケールからはじまり、上にキャベツ兄さんやメキャベツ姉さんをもつ、ブロッコリー・カリフラワー兄弟の絵本。
 コールラビなんて兄弟がいることを初めて知った。アブラナ科野菜は広大だわ。

 ブロッコリーは花のつぼみで、カリフラワーは花床と花芽という違いがあり、そのために姿は似ていても風味などから違っている。
 ただし、ややこしいことにカリフラワーの一種としてブロッコリーの名前が使われた歴史があるらしい。
 カリフラワーにはいろんな「バグ」もあって、妙な形状になってしまいやすいことが興味深かった。やはりブロッコリーよりも不自然な状態なのだなぁ……栄養もブロッコリーの方があるみたいだし、人類の嗜好以外に食べる理由がない。

 イタリアがブロッコリーの本場で、日本の気候が地中海性気候とはかけ離れているために、栽培には苦労があるようだ。苗を植えたら畝全体に寒冷紗を掛けて数日ガードした方がいいのは相当弱いと思った。
 まぁ、そんな手間を掛けるだけの価値を認められている野菜ではある。

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そだててあそぼう67〜ハクサイの絵本 わたなべえいえつ・へん

 みねぎしとおる・え。
 ハクサイの日本における歴史はわずか100年。日清戦争・日露戦争の時期に日本に渡ってきて、いまや日本料理に欠かせない食材になっているハクサイ。
 その育て方が分かる絵本。

 日本での歴史がそんなに浅いのに、「健康にいい日本食」を研究したヨーロッパ人によって、向こうでの生産量が増えている話がずいぶんな冗談だった。
 まぁ、百年ならば寿命に対する影響の試験は済んでいると考えられるかな。

 それにハクサイの類似作物は以前から育てられていて、日本人は似たような栄養素をそっちから得ていたかもしれない。
 そのためにハクサイに雑種ができて新しい種が結球しない問題に悩まされたことが面白かった。松島は島ごとにハクサイを育て分けたことがわかったけれど、愛知県や石川県はどんな対応をしたのだろう?山間部で育てるって奴なのかなぁ。

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そだててあそぼう55〜ミカンの絵本 かわせけんじ・へん

 いしまるちさと・え。
 ミカンと言えば温州みかん!でも、実は紀州みかんは来歴のことなる別の品種だったりする。品種改良によってとても広い品種をもつに至った柑橘類の育て方を紹介する絵本。
 タイトルにミカンとあるのは柑橘では子供の読者に伝わりにくいためのようだ。

 育てるものとしては温州みかんが一番に来ているけれど、別にレモンを鉢植えで育てたり、酢ミカンを接ぎ木を利用して一本の木に三種類育てたりすることが紹介されていた。
 レモンや酢ミカンは使用量が限られているから鉢植えでも家庭用には、それなりに満足できる量が得られるのではないか。なんともロハスな感じがする。
 人の育てた大きなお化けレモンを見たことがあったのだが、枝に付けっぱなしにしておけば自然となるそうだ。でも、ジュースが減るので直径5.5cmくらいで収穫した方がいいらしい。

 温州ミカンの場合はヘタが黄色くなるまでならしておくと最も美味しい実になるのだが、それをやると木の体力を奪ってしまい翌年の収穫に悪影響がある。
 すべての実のヘタを黄色にする木と、全部摘果して休ませる木を半々にしておけば最高のミカンを毎年楽しめるとのこと。
 そうして収穫量度外視で味わうミカンこそ自分で育てる醍醐味のあるミカンなのではないか。

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つくってあそぼう40〜保存食の絵本5魚介

 こしみずまさみ・へん、かわかみかずお・え。
 保存食の絵本シリーズの最後は日本人が貴重な蛋白源にしてきた魚介類の保存食。おおむね干物のことをさしているが、発酵食品であるなれずしにも少し触れている。
 かつおぶしもあるが、カビを使わない荒節なので発酵食品とは言えない。

 個人的に体験でタコの干物を作ったことがあるのだが、ちょっと液にくぐらせただけで濃厚な味がつくことに驚いたものだ。
 保存に必要な塩分濃度を考えれば、味があるのも当然のことかもしれない。もっとも現代の干物は昔の干物よりも塩分を控えめにして、pHや酸素、温度などをコントロールすることで保存性を向上させているらしい。
 塩分とりすぎの危険を考えれば、こっちの方が健康的である。あるいは、もどすための水を節約できそう。

 昔のやりかたも、それはそれで興味深いもので、何かあったときのために覚えておいても損はない。釣りに行って釣れすぎたとか。
 いろいろな保存食が紹介されているが、アンチョビやかきのオイル漬けは1ページで紹介するには難易度が高そうにみえた。浅く広い本で紹介するのに向いていたのかどうか――でも、いないとよけいに単調になるなぁ。

 絵はあわいが描き込みはしっかりしていて見やすい。ただ、調理シーンには登場人物のアクセントがほしかった。文の方にも原因はあるが、絵本と言うよりレシピになってしまっていた。

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つくってあそぼう39〜保存食の絵本4乳・肉

 家畜はそれ自体が保存食の一種。狩りで取る動物と違って、新鮮な状態で手元においておいて、必要な時期に新鮮な肉を得ることができる。
 そんな説明から乳や肉を加工して保存食をつくる方法について説明していく。

 最初は乳を加工したヨーグルトやバターの話なのだが、チャーシューやソーセージの作り方になると少々血なまぐさい。
 かわいい牛や豚、鶏のイラストがつけられている影響もあって「つくってあそぼう」とばかり考えていられない気分になる。
 それにしてもイラストに出てくる動物が減っていって少年と犬だけになる演出が怖い……少女が途中に1ページだけ出てきたのは料理をごちそうされただけだとして、豚さんや鶏さんはどうなってしまったのか?
 人間の友達の地位につけた犬がずるい。

 くんせいを作る方法にダンボールを2つか3つ重ねて簡単な薫製装置をつくる方法が紹介されていた。
 少なくとも庭のある家じゃなければできないな。煙に含まれている成分には工業的にやっかいな思い出のある「タール」が含まれているが、何事も分量しだいで良い方向にも悪い方向にも働く例であろう。
 巻末解説を読むと古代には日本にも肉や乳利用の風習があったのに断絶し、江戸時代以降になって利用が復活した流れがわかる。日本の食文化の中でも不思議な部分である。

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保存食の絵本〈4〉乳・肉 (つくってあそぼう)
保存食の絵本〈4〉乳・肉 (つくってあそぼう)
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